「ともしび」と街道を挟んだ山道を登った所に、裏岬の踵落としと異名をもつ内海を見渡す場所があった。
巨人が踵を滑らしたという言い伝えのある急峻な崖の場所であった。そこに通称テーブル岩という名の崖に突き出た処があり、これまでそこを自殺の場所に選ぶ者が多かった。
徳治の葬儀が終わった数日後、この場所に向かう木谷光恵の姿があった。
その後を表岬の観光地で魚の売り子をしている吉永小百合が様子を窺いながらつけてくる。
光恵が自殺者であると確信した小百合は、同じく表岬で喫茶店を経営している富田忠吾に連絡をする。
二人は自殺防止の為の自警団に入っていた。
何かを書き、カメラに自分を収める光恵。
光恵の胡乱な行動に確信した忠吾と小百合の二人は光恵を止めようとする。
しかし、それは小百合の早とちりであった。
光恵はルポライターとして雑誌の企画を任され、「命をつなぐ味」という企画の為の取材である事を二人に明かす。
「命をつなぐ味」とは旨いもの出会いで、自殺を思いとどまった事例を取り上げようというのである。
事実、木谷光恵自身が五年前この地で自殺を考え、「ともしび」のラーメンのお陰で自殺を思い止まっていた。
撮影 鏡田伸幸
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