サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

「環境保全の人づくり・地域づくり」に係る指標開発

2008年08月15日 | 環境と教育・人づくり
写真:トレニア

2006年4月に閣議決定された第三次環境基本計画では、重点施策の1つに、「環境保全の人づくり・地域づくりの推進」を示している。

三井情報開発・総合研究所に所属していた最終年に、最後の仕事と第三次環境基本計画の支援業務を受注したが、この重点施策はとりわけ思い出深い。

人づくりに係る施策と地域づくりに係る施策を合体させたのが、この重点施策である。

人づくりに係る施策とは、環境学習・環境教育のことである。地域づくりに係る施策とは、第二次環境基本計画の重点分野である「地域のあり方」に係る分野の流れをくむものである。

人づくりにおいては、地域づくりにおける実践的な学習が重要であり、地域づくりは同時に人づくりであるという認識から、2つの分野を合体させたと考えられる。

このコンセプトやよし、持続可能な地域づくりに係る施策もこれで進むと、よろこびを感じたことを覚えている。

しかし、せっかく、分野合体型の重点施策が計画に示されたのに、実際の施策は従来どおり、ばらばらの感は否めない。

そもそも計画の記述においても、施策方向では、人づくりと地域づくりの一体性を記述しているのに、その後に書いてある個別施策は、関連する施策を体よく並べているに過ぎない。

第三次環境基本計画のあと、地域づくりに係る新規施策は、コミュニティ・ファンドを通じたコミュニティ・ビジネスの支援ぐらいではなかろうか。これは、人づくりが重視されている施策ではない。

・・・

今年、幸か不幸か、「環境保全の人づくり・地域づくりの推進」に関する環境指標の開発業務を受注することができた。

人づくり・地域づくりの観点から、国全体の状況を把握したり、各地域が地域の取り組みを点検・評価したりするために活用可能な指標を開発することになる。

環境学習の側面と持続可能な地域づくりの側をならべた指標ではなく、「地域環境力」という観点で、人づくり・地域づくりを一体的に捉えたいと考えている。

「地域環境力」については、2003年版環境白書で、次のように記述している。

「地域資源の把握と主体間の連携を行っていくことで、地域が一つの方向性(目 標)を共有することとなり、地域に於ける各主体がより良い環境、より良い地域を創っていこうとする意識・能力が高まっていくことになります。こうして得られる地域全体としての取組意識・能力の高まり─これを「地域環境力」と呼ぶ。」

「地域環境力」を高めることは、同時に人づくりであり、地域づくりの基盤を高めることになる。

この観点で考えることで、人づくりと地域づくりを融合させることができるだろう。

ちなみに、第二次環境基本計画における「地域のあり方検討会」や、「地域環境力」をとりあげた2003年版環境白書の関連調査も、前職において担当した。腐れ縁のようなものか。がんばってみたい。


注1)環境省の「持続可能な教育」に関するモデル事業を、地域における実践による人づくりを進める事業として捉えれば、人づくり・地域づくりを一体化させたはじめての事業であると考えることもできる。

注2)「地域環境力」を、筆者は、主体の力、関係の力、活動の力という3つの側面で整理したいと考えている。関係の力は、ソーシャル・キャピタルに相当するもである。この点は、別の記事に少し記述した。
コメント (5)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« エコポイント事業の普及・発... | トップ | コミュニティの持続可能性を... »
最新の画像もっと見る

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
「地域環境力」期待したいです。 (hauru)
2008-08-15 19:57:21
こんばんは。
お花の名前、ありがとうございました☆
>「地域環境力」を高めることは、
同時に人づくりであり、地域づくりの基盤を高めることになる。
>この観点で考えることで、人づくりと地域づくりを融合させることができるだろう。

大事なことですよね。今必要なことだと感じます。
その中で、こうあればいいな。と個人的におもうこともあります。
そういった提案などはできるのでしょうか。
まだ何も分からない状態の中で
不躾な質問を申し訳ありません。
どうぞよろしくお願い申しあげます。
返信する
意見交換をさせてください (白井)
2008-08-16 01:23:00
業務は、委託調査ですので、勝手なことはできませんが、ぜひ、個人的に意見交換をさせてください。

この投稿欄で、提案をいただけると幸いです。
返信する
たいへんに恐縮に存じます。 (hauru)
2008-08-16 23:33:38
ありがとうございます。
先日は提案などと申しまして、たいへんに失礼いたしました。
のぶたろう様がお詳しいことは存じております。
成功している事例で、とてもよい仕組みだと感じているため、念のためお伝えしたく思いました。
お聞き届けくださいまして、誠に恐縮です。
よろしければ、ご参考になさっていただけましたら幸いです。

実際に山形の長井市で成功していることなのですが、
それは『レインボープラン』というもので、市民と農家と行政とが全て関わりあう仕組みとして発展したものです。
市民は家庭の生ごみを分別し、行政は回収とコンポスト化を、農家は有機堆肥を使って農業生産を、というまちの中での有機物の循環を実現しました。

生ごみの堆肥化には、長井市9,000世帯の内ほぼ全世帯、現在約5,000世帯が参加していて、
地域の主婦が中心となり、豊かな土に生まれ変わる生ごみは分別は日本一を誇るそうです。
長井市では、「土づくりの参加は、台所から始まる」とするという理念の確かさが市民意識を高め、仕組みの基礎を作り上げています。
農家ではその堆肥を使って土づくりをし、安全、安心作物を育てて、給食(学校給食、幼稚園・保育所等)や、まちの台所へとまた提供されていきます。

これは成功例ですが、この中から学べることが多いのではと感じています。
不躾でたいへんに失礼いたしました。
どうぞよろしくお願い申しあげます。

返信する
Unknown (白井)
2008-08-17 06:17:03
確かに長井市のレインボープランは、よい例ですね。

昔、調査をなんどかしたことがあります。最近はあまり気にしていませんでした。

よい堆肥をつくるにためには、生ごみに爪楊枝1つ入れてはいけないため、生ごみの出し方にはかなり気をつけるようです。

確かに、自分の出した生ごみが野菜となって自分の食卓に帰ってくるという地域づくりは、市民を育てる、よい仕組みですね。

なお、長井市では、もともろ市民参加の取り組みに熱心で、市民のまちづくり会議の提案で、この取り組みを始めたとようです。

いろいろと思い出しました。

いい提案をありがとうございました。

返信する
ありがとうございます。 (hauru)
2008-08-18 00:14:34
恐縮です。
ありがとうございます。
恐れ入りますが、きっとここが、今、一番大事な部分とおもわれるところを
付け加えさせていただいてもよろしいでしょうか。


台所から始まり、学校給食になって戻ってくる。といくことは、
保護者の方々と子どもたちを、
「食の道」をとおして、繋ぐこともできるとおもうのです。

その保護者の方の会話の中に、食べるということは如何に生きていくうえで根本であるのか。
自分の行為がどのように、自分の元に返ってくるか。

それは、今の環境をめぐる循環の基礎がここにあるとおもうからです。
大事なことを、この命の源となっている食をとおして、
自然に学ぶことができる。
願うことなら、すべての人々に-。
とおもっています。

環境も含め、心豊かな未来にしたいと切望します。
どうもありがとうございました。
そして、どうぞよろしくお願い申しあげます。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

環境と教育・人づくり」カテゴリの最新記事