普及啓発を図る対象は、デモグラフィック属性(性別、年齢、職業等)あるいはサイコグラフィック属性(ライフスタイルや価値規範等)からセグメントを設定することが考えられるが、戦略的な施策を考える際には、環境配慮に関する意識や行動の2軸から対象を分類することが有効ではないだろうか。
図に、環境配慮への関心・知識の程度、行動の実施度の2軸からの対象分類と、各対象に対する施策方向を整理した。この2軸の整理は環境省(2011)を基にしているが、環境学習と普及啓発の施策との対応づけを付加している。
低意識・低行動の層に対するアプローチは、環境問題への何らかの気づきを提供する「気づき学習」ともいうべき環境学習施策と、とにかく楽しく、ためになるような環境配慮行動を意識せずとも実施してもらような「直観的行動促進」ともいうべき普及啓発施策の異なる2つの方法が考えられる。
低意識・高行動の層に対しては、自らが意識にせずに実施している行動が環境問題解決に関連することを知ってもらう「意識づけ学習」により、高意識・高行動の層に移行してもらい、さらに主体的に学習や行動に取り組んでもらうことが狙いとなる。
高意識・低行動の層は、意識はあるのであるから、「直観的行動促進」というより、より合理的な行動機会を提供していく「合理的行動促進」が有効であると考えられる。
このように、意識と行動の2軸から対象を分類し、普及啓発と環境学習の2つの施策を組み合わせて実施することが考えられる。
なお、こうした4つの対象設定と施策方針を基本に、施策方針をさらに具体化する際に、デモグラフィック属性やサイコグラフィック属性による差異を考慮していくことが考えられる。例えば、同じ低意識・低行動であっても、女性と男性、年齢、価値規範によって、楽しいと思う行動が違うため、「直観的行動促進」の方法も多様性が必要となる。
参考文献
環境省(2011):今後の環境教育・普及啓発の在り方を考える検討チーム報告書,pp.21.