千葉県の酒蔵見学記「鍋店」
下総神崎(しもふさこうざき)を降りるとシャトルバスが待っていた。バスの中は初老を迎えた男たちに混じって白髪の女性が何人もいた。マイクロバスに乗り切れない人がいだ。五分ちょっとで戻って来ますから待っていて下さい。運転手さんが白髪の男たちに話している。
近所に住む農家の人が鍋店(なべだな)酒造の蔵祭りに雇われ、シャトルバスの運転してにいるという感じだった。下総神崎は田園の中にある。成田から銚子にむかい、三つ目の駅が下総神崎である。駅前に成田線に並行して一本の道がある。その道沿いに昔ながらの商店街がある。その商店街が途切れた所に目指す酒蔵、鍋店(なべだな)があった。狭い間口を入った所に受付のテントがある。名前を記入すると利き猪口と日本酒教室のレジュメが渡された。その中に豚汁引換券、酒饅頭、麹煎餅、利き酒体験、お蕎麦などの引換券の付ひたシートが入っている。ちょうど昼近い時間だったので麹米で作った焼き立ての煎餅、豚汁を注文した。煎餅は焼きお握りといった感じだった。豚汁と一緒に日だまりでいただいた。
お蕎麦をいただいていると放送が入った。日本酒講座が始まる。早々にお蕎麦をいただき、会場に行くと席は満杯、空いてにいる席を後ろのほうに見つけ、座った。
若い女性が鍋店(なべだな)を訪ねる。エ場長が酒蔵を案内する。酒造りの工程を説明するビデオを二十分ほど上映する。その後、専務さんから酒ができるメカニズムについての説明があった。
「鍋店祭り」は有料の参加者と無料の参加者がいる。有料の参加者は百五十名に限定している。二千円でお蕎麦やら酒饅頭、豚汁などが付く。メインはもろみの袋しぼりに参加し、絞りたてのお酒、720㎖がもらえる。専務さんが言っていました。この日本酒講座に参加されている人は二万円ぐらいの価値があることを体験できるのではないかと。150人の参加者で一日ゆっくり蔵を見学し、酒造りを学び、利き酒をする。このような企画は、今回初めてのことのようであった。二回目は無料、日本酒講座は開かれない。袋しぼり体験もない。蔵を見学し、利き酒をする。酒饅頭や豚汁を安い値段で買う。去年は1800名の参加者があったという。その参加のアンケートから日本酒講座、袋しぼり体験という企画が生まれたと説明があった。
「総の舞」という酒造好適米は千葉県が開発したお米だという。この米で醸した酒を袋しぼりする。絞ったままの酒、原酒、一切の火入れ、濾過をしていない。これは酒蔵でしか手にいれることができない酒だ。ラベルには自分の好きな銘柄を付けることができる。これが鍋店の蔵祭りのウリのようだ。確かに専務さんがいうように二万円くらいの価値があるようだ。150名限定、参加費2000円、安い。帰りの電車で一緒になった参加者が来年また鍋店で逢いましようと別れるとき、挨拶してくれた。
鍋店酒造は千葉県の酒蔵の中では大きい酒蔵のようだ。去年、酒蔵見学会に行った酒々井の酒蔵「甲子正宗」と同じ規模の酒造会社のようだ。生産石数はほぼ5000石。1000石規模の酒蔵が圧倒的に多いなかにあって、5000石の規模を持つ蔵は大きい。旧家の民家の中にある酒蔵というイメージではない。食品工場という感じであった。
蔵見学で印象に残ったことは麹室での説明であった。麹を握った感触が手に残った。