*****ご注意!!!一部ネタバレを含む可能性があります!*****
少し前に読んだ コンクールでお会いしましょうでの著者の切り口、語り調が読みやすかったので、続けて読んだ1冊
著者はクラッシック音楽界にあって ピアニストという種族がいると愛情をこめていう。
ピアノに魅せられ毎日6-7時間ピアノと向き合い良い音を届けようとするピアニスト達のエピソードを時に自虐的な笑いを込めて語っている。
海外の歴史に残るピアニストのプライベートな一面を知るのも面白いが、本作品では日本の純国産ピアニスト1号である久野久(くのひさ)についての3章強が心に残る。
明治後期から大正時代を生きた久は、決して裕福ではない(むしろ貧しい)家の出身で、西洋音楽を生で聴くことはもちろん、録音でさえも聴くことがままならなかった時代に、ピアニストとして模索し続ける。
国内では比較する者も、評価する者もなかったために、一流のピアニストとされ、やがて本人が望んだわけではないのに海外挑戦をすることを期待される。
そして海外への渡航。
そこで初めて触れ、知ったピアノ音楽に改めて魅せられ、学ぼうとするが、ある種の拒絶を受けて最後は自殺してしまうという人生だった。