うさぎさん

毎日、毎日、たくさんの人とすれ違って、
挨拶ひとつ交わせない…都会。
まるで自分とは全く関係のない人のように、
遠い国の人かのように、言葉の通じない、
無機物のように…過ぎてゆく…、景色の一部として、
流れていく人、人…人。

昨日、薬屋さんの前で大きなうさぎさんに会いました。
作りもののメと目が合うと…
作りもののメはちゃんと私を“見た”ようにして、
手を振ってくれました。

私は思わず笑顔して通り過ぎたけど……、
今、私が笑顔を返したのは着ぐるみのうさぎさん？
それとも中に入っていた“人”ですか？

寂しかった通りに、明かりが灯った気がしました。

寂しい世の中ですか…？行き交う人には挨拶もせず、
お困りの方には目を瞑りますか？肩が触れ合っても心が通わない…、
世知辛い世の中ですか？

いいえ、目と目が合えば会釈する文化です。
一期一会であっても、礼は尽くす心です。

あの人は何を思って手を振ったのかな…。

私はダンスで一度に大勢の人と語らうことを知りました。
ダンスは言葉、ダンスは愛、声で語らなくとも、感じるもの…。
…贈られる拍手にはいつも真実があります。
踊りで出来るなら、常日頃の態度から…。

うさぎさんには通じたみたいです。 ありがとう。 宏美