【かわいい】シーズー画像集【いやし犬】様よりm(_ _)m
さて、今回は前文に何を書きませうww(^^;)
↓で、子供たちが「犬を飼うか猫を飼うか、それともうさぎ??」的な話をしているわけですけれども、そういえばよく考えてみるとわたし、犬と猫とうさぎについては、それぞれ飼ったことがあるなあ……と思いだしたりして。。。
まあ、最後まで面倒みたのは犬だけだったりするんですけど(汗)、猫については小学二年生くらいの時に母が一度は飼ってもいいって言ってくれたものの、わたしが小二で兄が小四くらいで、結局面倒みるのはお母さん――みたいな感じで、母も働いていて面倒みきれないと思ったんだと思うんですよね。真っ白くて小さくて本当に可愛い子だったのですけど、違う方にもらわれていくということになってしまい。。。
いえ、わたしこの時ぎゃん泣きしましたそんで、小学三年生くらいの時に仲良くなった子のうちに遊びにいった時……この猫ちゃんのことで少し恥かしい思いをしたことがありましたっけ。小二の時の作文で、「そのとき、うちにまっしろなかわいいにゃんこちゃんがやって来たのです!にゃんこちゃんはとってもかわいくってちっちゃくて、ほんとうにほんとうにうちにきてくれてうれしかったです!」とかってわたし書いてたらしく、その文章を読まれた時にはめっちゃ恥かしかったというか(^^;)
まあ、母曰く、その後十年くらいが過ぎて父が犬を飼ってもいいって言ってくれた時……「犬は可愛いと思えていい」とか言ってた記憶があります。いえ、母はとっても良い人なんですけど、昔化け猫の映画ばかりたくさん見たことがあって、以来、猫には物凄く苦手意識が本当はあったらしく。。。
この点、わたし自分で犬を飼う前までは完璧に猫派な人でした♪でも、犬飼っちゃうと今度はこの犬っていうのが可愛くて可愛くてたまらなくってねえ(笑)なので、今は果たして自分が犬派なのか猫派なのかなんなのかよくわかんないんですけど、小三か小四くらいの時に飼ってもらったうさちゃんは、そういえば名前がミミちゃんと言いましたっけ
いえ、今だったらたぶん、「うさぎの飼い方」的な本を買ったりして読んだと思うんですけど……まわりにうさぎ飼ってる人もいませんでしたから、首のところに赤いリードつけて公園まで散歩にいったりとかして。。。
このうさぎさんとの思ひ出で、わたしの中に残ってるのは、うさぎの洗顔というか、毛づくろいがめっちゃかわいい!!ということだったでしょうか。
たぶん、ようつべとか探せば映像ありそうなんですけど、まずは自分の手のひらというか、肉球っぽく見えるところをナメナメして、顔や自分の耳のあたりを拭くような仕種をするんですよね。もう、その仕種が可愛いったらなくて……そんで、この子ははこべとかタンポポの葉っぱの部分がとても好きな子だったんですけど、まあ基本的にエサとしてはペットショップで売ってるラビットフードをあげたりとかしていて。。。
んで、犬のほうはシーズー犬を飼ってたんですけど、まーほんと、顔というか、容姿がいい以外にはなんの取り柄もない駄犬でねえ(笑)でも、我が家にとっては世界で一番可愛い犬でした
まあ、シーズー犬というと鼻のあたりが潰れてる軽くブチャいくな犬☆っていうイメージがあると思うんですけど、飼い主の欲目とかじゃなく、うちの子はすごく可愛かったです♪最初は「ご主人に似てブチャいくですね~」とか言われそうで、どうせ飼うんなら別の犬がいいな……とか思わなくもなかったんですけど、会いにいったらもうこれが可愛くて可愛くて
犬とか猫とか飼ってる方の多くがそうだと思うんですけど、「もう~、どうちてキミはこんなにかわいいんでちょう!」とか「キミは自分が可愛いことを知ってるでちゅね?そうでちゅね?そんなかわいいわんちゃんには、エサをあげまちょう!」とか……まあ、傍から見る分にはただのアホ☆にしか見えんわけですが(笑)、そんなふうに犬としゃべってる時が自分自身、一番癒される時間でもあるという。。。
もっとも、うちの犬は最初のうち、そんな馬鹿な飼い主にもつきあってくれるのですが、エサをわたしの手から奪ったあとはたたたっ!と走っていって、「へっ!人間なんかまったくチョロいもんだぜっ!!」とばかり、鳥のササミなんかにがっついてましたっけねえ(笑)
そういえば、これもかなりどーでもいいのですが、昔何かの豆粒みたいにちっちゃな賞に、
ずっしりと重いシーズー犬、しずしず歩いてとっても静か。
みたいのを応募して、500円分の商品券か何かもらったような記憶があります(ほんとにどーでもいいよ☆)
まあ、しょーもない駄文で申し訳ないのですが(汗)、なんにも書くネタ☆思い浮かばなかったもので……ええと、次回はなんだっけな。確か、マクフィールド家で犬を飼うのか飼わないのか的な話だった気がします(^^;)
それではまた~!!
聖女マリー・ルイスの肖像-【31】-
その後、ロンは以前のように突然食が細くなったりすることもなく、毎日どうということもないといったような単調さで学校へ通っていた。これはロンがあとから友人らに聞いて知った話だが、ジョンはロンから突き飛ばされて塀から落下した時、捻挫して泣きベソをかきながら家に帰ったのだという。
おそらく状況全体の惨めさとしては、捻挫したジョンよりもロンのほうが重傷だった気がするのだが――その後、ジョンは学校を一週間ほど休んだ。そしてこの一週間という時間がおそらく彼には致命的だったのである。その間、クラスの男子も女子も、ジョン・テイラーのいない天国というのをすっかり満喫してしまった。そのせいもあってか、ジョンが登校してきた時、以前ほどの強さも不気味な魔力なようなものも、彼の背後からは消えてしまったのである。
とはいえ、彼には腹心の配下といったような生徒がふたりおり、彼らは悪魔に忠誠を誓ったしもべよろしく、ジョンの言うことをその後も聞き続けていたようだが、その影響力と脅威とは随分小さなものになっていたといえるだろう。また、このことがあってから、副担任のケリー・ローズも、ロンのことを明らかに贔屓しているとわかる態度を取るようになっていた。何故といって彼の英雄的行為のお陰で自分もマクドナルド先生も余計なことに手を焼く必要がなくなったからである。
また、贔屓しているといっても、それは他の生徒の目から見て度を越しているといった感じのものではなく、ロンが相手ならそれも仕方なかろうと、他のクラスメイトも納得できる範囲のものだったといってよい。
こうしたわけで、ロンはジョン・テイラーから以前として「いるだけでなんとなく嫌な感じ」という雰囲気を受けはするものの、ショーンや他の友人たちに囲まれて、毎日を楽しく過ごすことで――彼のことはそんなに気にしないで済むようになっていた。最初は「仕返し」ということを多少恐れないでもなかったが、「あいつが泣きベソをかくところをロンにも見せてやりたかったよ」とみんなが口々に言うのを聞き、またジョン自身の存在が小さく見えるようになったこともあり、ロンは彼のことを視界に入ってきても「いないもの」として扱うのにかなりのところ慣れていったのである。
「みんな、ぼくがあのあとどうしたかって聞きたがったから、いばらの生垣に落ちて相当痛い思いをしたなんて言わず、ウェザビーさんちの家から出ていこうとしたら、ロットワイラー犬が襲いかかろうとしてきたって話をしたんだ。最初は咬まれるかと思ったけど、実は人懐っこい犬で、顔や手をなめてきたって言ったら、みんなびっくりしてたよ。『ロンは本当に勇敢なんだなあ』なんてね。ほんとは全然そんなことないんだけど、みんなぼくのことを置いて逃げだしちゃったんだし、まあそういうことにしておいてもいいかなと思って」
もちろん、ショーンも、エディやアーサーもみんな、あとからあやまってくれた。ウェザビーさんの家の前を少しの間うろうろしてたけど、ウェザビー夫人には「気違い」という噂があるもので、見つかったりしたら大変だと思って脅えていたのだという。
「それでね、ジョンの奴がロットワイラー犬に手や顔をなめられただなんて、そんなの嘘に決まってるなんて言うもんで……ぼく、今度はそのことを証明することになったんだよ。そしたら、やっぱりあいつ、尻尾を振りながら前とおんなじようにしてたんだ。ジョンの泣きベソは見損ねたけど、その時のあいつの顔こそ見物だったよ。ぼくはあの時のお礼に、パンを少しばかり犬にやってきた。ショーンもエディも最初はビビってたけど、ほんと、人懐っこい可愛い奴だよ。あれ以来、ぼくたちは学校帰りにあの犬にエサをあげたりするのが習慣になっちゃった。それに、あの犬のほうでもぼくたちが来るのを待ってるみたいなとこがあって、そのことがまた嬉しいんだ」
「そう。よかったわね」
この決闘事件があって以降、ロンは少し大人になったようだとマリーは感じていた。背丈も少し伸び、もはやその必要もないはずなのに、イーサンと一緒にジム通いも続けている。先日、マリーは彼と一緒に出かけていって、スポーツ用品店でトレーニングウェアを一式買ってきていたほどだ。
「それでね、おねえさん。ぼく、思いきってイーサン兄ちゃんに犬を飼いたいって聞いてみたんだ。そしたらさ、『ジョン・テイラーのような奴がいない世界へ行くためにも、おまえは私立校を受けるんだろうが』って言われちゃった。フェザーライルやロイヤルウッドとまでは言わないまでも、セント・オーディア校くらいのレベルを目指すのであれば……ぼくがいなくなったあと、犬の面倒は誰か見るんだだって」
「…………………」
マリーはこの件については即答しかねた。簡単にロンの不在の間は自分が面倒を見るとは言えない気がしたからだ。
「えーっ。そういうことならわたし、飼うんなら猫がいいな」
ココがおかわりの紅茶をポットから注ぎながら言った。ミミは幼稚園から、ランディとココとロンは学校から戻り、みんなでおやつを食べていた時のことだった。
「俺は断然犬がいいな」と、ジャムドーナツを頬張りながらランディ。「セントバーナードとかゴールデンレトリバーとかシベリアンハスキーとか……とにかくなんでもいいからでかい犬がいい」
「ぼくは小型犬がいいんだけどな。チワワとかミニチュアダックスフントとかさ、ミミが遊ぶのにもちょうどいいだろ」
ロンがそう言うのを聞いて、ミミはにぱあっ!といかにも嬉しそうな顔をした。これまで、おねえさんとヴィクトリアパークを散歩している時に、可愛い服を着たチワワや耳のところにリボンをつけたダックスフントなどによく会っていたからだ。
「おねえさんは飼うとしたら、犬と猫、どっちがいいの?」
マリーを自分の味方につけたくて、ココはそう聞いていた。
「そうねえ。わたしは結局、犬でも猫でも、飼ったらどっちでも可愛いんじゃないかしらと思うけど……」
本当はマリーは猫派だったので、ココの味方をしてもいいはずだった。けれど、もし何かペットを飼うとしたら、自分が面倒を見ることになるというのは火を見るよりも明らかであり、自分が大型犬のリードを引いている場面や、下痢をした猫の始末などをしている場面が思い浮かび――彼女の返答はどっちつかずのものになっていたのである。
そしてこの時、玄関のほうでシャラアン……と妖精の鈴が鳴り、イーサンの帰宅を知らせた。彼は他の子供たちがいつもそうしているように、真っ直ぐダイニングへやって来、まずはテーブルの上からチョコクッキーを一枚とって食べる。
「イーサンにいたん、おそとから帰ったら、まず手を洗ってうがいしなきゃメッ!なの」
うさしゃんに怒ったような動作までされて、思わず彼は笑った。
「そうだな。まあ、それじゃあちょっと手を洗うか」
イーサンはキッチンのところで軽く手を洗うと、自分の席につき、この日もレポートを書くための読書をしつつ、マリーがコーヒーを淹れてくれるのを待った。ところが、彼も弟妹らの視線が自分に集中しているのに気づき、ふと顔を上げる。
「……なんだ、おまえら。何か俺に話したいことでもあるのか?」
ニーチェの生涯について書かれた本を閉じると、イーサンはランディやロンやココの顔を順番に見渡していく。
「イーサンはさあ、もし飼うとしたら犬と猫、どっちがいいの?」
「それを俺に聞いてどうする?第一、俺には犬も猫もどっちも飼う気はないからな。もしおまえらの間で犬を飼うか猫を飼うかで揉めてるっていうんなら、そりゃ無駄な議論ってものだ。その他、ハムスターでもモルモットでもなんでもいいが、どうせ結局面倒見るのはマリーだろ?そんな余計なことをして、おねえさんのことをこれ以上煩わすんじゃない」
イーサンの物言いがいつものとおり断固としたものだったので、ロンもココもランディも、顔を見合わせて溜息を着くと、この話はこれまでということがわかっていた。『じゃあ、おねえさんがもしいいって言ったらいいの?』とまで聞く者は誰もいない。
「はいはーい!!ミミはねえ、わんさんもにゃんたんもいらないの。飼うとしたら、うさぎさんがいいでーす」
「ミミには可愛いプリンセスうさしゃんがいるだろ?それに、うさぎを抱っこしたかったら、そのうちまた動物園へ連れていってやる。それで我慢しろ」
「にいたん、本当!?ミミねえ、またペンギンさんの行進が見たいな。あと、イルカさんやアシカさんのショーでしょ、白クマさんもね、おっきくてとっても泳ぎがおじょうずなの。ミミ、将来はきっと動物園ではたらく人になってね、動物園に住もうと思ってるのよ」
ミミのこの将来の夢を聞いて、イーサンは笑った。ユトレイシア動物園は冬でも閉園せずに営業しており、その時イーサンはマリーとちょっとしたデート気分を味わっていた。ランディとココとロンは動物園に一切興味を示さず、その結果ミミだけを連れてあちこちの展示やショーなどを見てまわることになったからだ。
「動物園へはそのうちまた行ってもいいけど」と、マリーがイーサンにコーヒーを渡しながら言う。「でも次は、出来れば春くらいのほうがいいわね。ミミちゃんが風邪をひいたりしたら大変ですもの」
実際、顔を蒼白にして鼻水を垂らしながらも、ミミはあっちの動物、こっちの動物と見たがったため、次の日には熱を出して幼稚園を休んでいたのだった。
「そうだな。次に行くとしたら春先だな。そしたら、冬には見ることの出来ない他の動物もたくさん見ることが出来るだろうし……まあ、うさぎか。確かに犬や猫よりはうさぎのほうが飼育は楽かもしれんな。実際、柵を囲ったうちの庭に放しておけばいいだけの話でもあるし、鳴き声がうるさいってこともないからな」
「えへっ。うさしゃん、もしかしたらお友達ができるかもしれませんよ?」
この話を聞くと、ココは肩を竦めて椅子から下りた。実際、彼女は本当はイーサンが犬派だということを知っている。けれど、もし犬を飼うとなったら毎日散歩へ連れていったりなんだり……それだけでなく、今日の散歩係はランディだろうだの、何故エサをやる係のロンがそれをやってないんだだの、自分の怒る回数が増えるだけだと彼自身よくわかっているのだ。
ココは猫の形のクッキーを最後に口の中へ放りこむと、この話は忘れることにして、モニカの家へ遊びに行くことにした。最近、ココはモニカとカレンと一緒にまた、例のファッションブックの新しいのを作りはじめているのである。
「ぼくも、勉強しよっと」
ロンがそう独り言を言い、自分の飲んだマグカップを下げると、ランディも弟に続いてそ~っとダイニングから出ていこうとした。けれど、イーサンは本に目を落としたままこう言った。
「おい、ランディ。おまえは勉強道具一式持って、今日もここで宿題をやれ。で、宿題が終わったら受験勉強だ」
兄から厳しい顔つきでジロリと睨まれると、ランディは自分の座席に戻って弁明をはじめた。
「ねえ、兄ちゃん。頭の悪い俺に私学校の受験は無理だって。それに、小学校六年分の成績表を向こうの人は全部見ることになるんだし……そんなんで合格できる学校なんて一校もないって俺は思うよ。第一先生だってそう言ってる」
「そんなことはわからん。俺はおまえと一緒にアメフトの映画を見たことが何回かあったよな?あれと同じでな、ベストを尽くしたっていうんならともかく、十分努力もしないうちから投げだすことだけは、この俺が絶対に許さん」
この時、マリーはランディから(おねえさんからも言ってやってよ)という視線を向けられたが、彼女は『味方してあげられなくてごめんなさいね』というような顔しか出来なかった。確かに以前までは、『公立校でいいじゃありませんか』とマリーも言うことが出来た。けれど、夏休みに一生懸命勉強しているネイサンや、今またジョン・テイラーのような生徒がいない世界を求めて私学校受験を決めたロンのことを見ていると――彼女にも何が本当にランディのためにいいことなのかが、わからないのだった。
「あーあ。じゃあさ、やるだけのことは一応やってみるけど、それで駄目だったとしても俺を責めないでよね。ロンの奴はさ、本人もやる気になってるから、もしかしたらネイサンが通う予定のセント・オーディアに合格するかもしれない。だけど俺の場合は一番下のほうの学校にどうにか引っかかるかどうかなんだから……それで駄目なら諦めてって話」
「言い訳はいい。それより早く勉強道具を持ってこい。兄ちゃんだってそんなに暇人ってわけじゃないんだからな」
ランディとイーサンがリビングのほうで勉強をはじめると、マリーはミミを彼女の子供部屋のほうへ連れていった。ミミの存在が邪魔になるというよりも――イーサンの教え方が相も変わらず厳しいものなので、ミミの繊細な心に影響してはいけないと思ってのことだった。
今までもイーサンは、自分に時間のある時にはランディやロンやココの勉強を見てはきた。けれど、ユトレイシアから車で一時間半ほどいった場所に、セブンゲート・クリスチャン・スクールというプロテスタントの教会が建設した学校が新しく開校するという話を聞くと、そこにランディのことを放りこもうと考えたのである。そうは言っても、イーサン自身は相も変わらず無神論者であり、何も弟にだけは立派な信仰心を持ってもらいたいなどと思っているわけではない。ただ、クリスチャンの私学校ということになれば、両親ともに毎日曜は必ず礼拝を守っているといったような、折り目正しい金持ちの子息が集うはずなのである。イーサンとしては、学校初日にランディが「デブ」と呼ばれて心が折れて不登校になるだの、教科書に落書きをされたり、持ち物を隠されたり、あるいは金を巻き上げられたり……そうした脅威から弟を守ってやりたいのと同時、そんなことで学校に呼びつけられて煩わされたくないのである。
確かに、ランディの過去六年に渡る学校の成績は悲惨なものではある。だが、例のノアの箱舟チームのデイヴィッドに聞いたところによると、そうしたクリスチャン校の面接で必要なのは、両親の信仰がはっきりしていて熱心であること、またランディ自身も洗礼を受けており、信仰告白していることなどが重要なのだという。逆に、「どんなに成績がよくても、両親の信仰があやふやだったり、生徒自身が入学前にイエスを受け容れていないということだと、まず受からない」という話だった。
この話を聞くと――というのも、デイヴィッドは息子のことをそちらの学校へ行かせるか、別の私学校へ行かせるかで迷っているということだった――イーサンは日曜の朝はランディのことを叩き起こし、無理にでもマリーやミミと一緒に教会へ行かせた。キリスト教の問答についてはマリーが詳しかったので、彼女をランディと一緒にセブンゲート・クリスチャン・スクールの面接に行かせようと、イーサンはそのように目論んでいたのである。
「俺がロイヤルウッドの寮にいる時も、そういう手合いのお坊ちゃんってのは随分いた。あいつらはな、聖書の原則に従って行動するから、理由もないのに暴力をふるったり、他人をいじめたりとか、基本的にそういうことはしないんだ。そのかわり、日常生活でどんな時にイエスを感じるかだの、普段からしょっちゅう聖書の句を引用したりだの、そういうところが鬱陶しいが、そこさえ我慢できれば、つきあっていくのに悪い奴らではない」
勉強の合間合間にしょっちゅうそう言っては、イーサンは「これがおまえにとって最後のチャンスだ」とランディに言い聞かせた。これからの学校生活が天国になるのも地獄に変わるのも、今のおまえの頑張りにかかっているんだぞ、と。
そして、残りの精神的な詰めに関しては、アメフトの映画を何本も一緒に見て弟を洗脳することにした。というのも、アメフト映画には不可能を可能にしたチームだの、ずっと負け続けた弱小チームが連戦連勝した奇跡だの、そんな話が多いからだ。イーサンは体格的に、ランディはそれなりに修練を積めばいいラインマンになるだろうと思ってはいたが、この場合はランディをアメフトの選手にするのが目的ではない。クリスチャンの私立校にランディのことをぶちこみ、彼がその後六年平穏な学校生活を送り――三流校でいいから、彼が大学に進学してくれることがイーサンにとっては兄として大切なのである。
「でもさあ、そこって結局、寮に入らなきゃいけないんでしょ?」
「まあ、全寮制らしいからな。だが、土日だけはこの屋敷に戻ってこれる分だけ、遥かにマシだぞ。ロンなんか、もしセント・オーディアに合格したら、休暇の時しか戻ってこれなくなるからな。だが、セント・オーディアの卒業生だっていうのは、あいつの一生にずっとついて回ることだから、将来的にはそれで良かったと本人も思うことだろう」
「…………………」
正直なところをいって、一時間半かかってでも、毎日家に戻ってこれるなら、ランディとしてももう少しやる気になれる。けれど、寮生活をはじめたら、九時には必ず就寝しなければならないだの、色々守らなくてはいけない規則が出てくることだろう。そう思うとランディは心が重くなったし、何よりケビンもブラッドも普通の公立校へ進学するのだ。たとえ別々のクラスになるのだとしても、ランディは彼らと同じ学年でありたいと思っていたというのもある。
けれど、相手がマリーおねえさんならともかく、兄のイーサンが一度こうと決めたからには、その決定にランディは逆らえないとわかっていた。それに、お金持ちの品行方正な子たちが多いから、いじめのリスクを下げられるということにも、魅力を感じるところはあるにはあった。
なんにしてもとにかく、英語の文法やら、ユトランド共和国の歴史やら、算数の分数と小数点の計算やら、暗記できるものはとにかく暗記し、「何故こうなるのか」理解できないまでも、算数については計算の法則性をとにかく覚えこもうとした。以前はよく、「なんでここで分母がこうなるの?」だの、色々と理屈を並べたてたランディだったが、最近はとにかく詰め込み式に出題パターンと法則性のほうを重視して教えられることが多くなっていたといえる。
夕食の時間になるまでこれが続き、イーサン自身の時間のある時には、食事が終わったあとも勉強することがよくあった。ランディはとにかく早く勉強を終らせてゲームがしたくて仕方なかったが、そんな弟にイーサンはこんな話を聞かせたものだった。
「いいか、ランディ。俺がなんでテレビゲームはおろか、携帯ゲームさえしないかわかるか?」
「えっと、なんだっけ。クォーターバックはフィールドをなるべく遠くまで見渡さなきゃいけないポジションだからとか……そういうことだよね?」
ランディはマリーが淹れてくれたお茶を飲みながら言った。頭を使って疲れたので、チョコレート菓子をひとつ摘んで食べる。
「そうだ。俺は十一の時まで、誰が自分の父親か知らなかったし、家のほうも貧乏だった。だから、家にはゲームなんて買ってもらえるような余裕もなかったし、そういうのを当たり前みたいに持ってる友達が羨ましかった。けど、そのかわり野球とかアメフトとかな、それならそれで別の楽しみが出来る。それで、俺にとってはそれで良かったんだ。ゲームは面白いし楽しい。たけど、優秀なクォーターバックは視力がいいに越したことはないんだ。もちろん、スポーツ眼鏡とか、そういうのをつけてプレイしてる選手もいるがな……とにかく、そういう自分が本当にやりたいと思える目的さえあれば――おまえが今は中毒みたいなってるゲームでさえやめられる。今はそんなふうに思えなくても、より崇高な人生の目的さえ見つかれば、自然とそうなるんだ」
イーサン自身はゲームの面白さについてはよく知っているため、弟たちにそれを禁止しようとは思っていない。誕生日やクリスマスにも、そうしたプレゼントをしたことはこれまでに何度もあるし、今もゲームをやめろといったようには思わない。だが、もっと他にその分の時間を使ったほうが……もう少しバランスの取れた時間の使い方を弟がしたほうが、将来的に彼のためになるだろうと思っていた。
一方、ランディはいつもながら兄の説教について感心してはいたものの、『自分とイーサン兄ちゃんとではそもそも最初から出来が違う』との思い込みがあるため、何かの目的(たとえばダイエットなど)のために何か制限する努力をするといったことは、まるで自分向きでないとしか思わなかった。それに、その時々で楽なほうへ流されて何が悪いというのかも、ランディにはまるで理解できていなかったのである。
ただ、とにかく家長としての兄には言い逆らえないことから、唯々諾々と従っているに過ぎないのだった。
>>続く。
さて、今回は前文に何を書きませうww(^^;)
↓で、子供たちが「犬を飼うか猫を飼うか、それともうさぎ??」的な話をしているわけですけれども、そういえばよく考えてみるとわたし、犬と猫とうさぎについては、それぞれ飼ったことがあるなあ……と思いだしたりして。。。
まあ、最後まで面倒みたのは犬だけだったりするんですけど(汗)、猫については小学二年生くらいの時に母が一度は飼ってもいいって言ってくれたものの、わたしが小二で兄が小四くらいで、結局面倒みるのはお母さん――みたいな感じで、母も働いていて面倒みきれないと思ったんだと思うんですよね。真っ白くて小さくて本当に可愛い子だったのですけど、違う方にもらわれていくということになってしまい。。。
いえ、わたしこの時ぎゃん泣きしましたそんで、小学三年生くらいの時に仲良くなった子のうちに遊びにいった時……この猫ちゃんのことで少し恥かしい思いをしたことがありましたっけ。小二の時の作文で、「そのとき、うちにまっしろなかわいいにゃんこちゃんがやって来たのです!にゃんこちゃんはとってもかわいくってちっちゃくて、ほんとうにほんとうにうちにきてくれてうれしかったです!」とかってわたし書いてたらしく、その文章を読まれた時にはめっちゃ恥かしかったというか(^^;)
まあ、母曰く、その後十年くらいが過ぎて父が犬を飼ってもいいって言ってくれた時……「犬は可愛いと思えていい」とか言ってた記憶があります。いえ、母はとっても良い人なんですけど、昔化け猫の映画ばかりたくさん見たことがあって、以来、猫には物凄く苦手意識が本当はあったらしく。。。
この点、わたし自分で犬を飼う前までは完璧に猫派な人でした♪でも、犬飼っちゃうと今度はこの犬っていうのが可愛くて可愛くてたまらなくってねえ(笑)なので、今は果たして自分が犬派なのか猫派なのかなんなのかよくわかんないんですけど、小三か小四くらいの時に飼ってもらったうさちゃんは、そういえば名前がミミちゃんと言いましたっけ
いえ、今だったらたぶん、「うさぎの飼い方」的な本を買ったりして読んだと思うんですけど……まわりにうさぎ飼ってる人もいませんでしたから、首のところに赤いリードつけて公園まで散歩にいったりとかして。。。
このうさぎさんとの思ひ出で、わたしの中に残ってるのは、うさぎの洗顔というか、毛づくろいがめっちゃかわいい!!ということだったでしょうか。
たぶん、ようつべとか探せば映像ありそうなんですけど、まずは自分の手のひらというか、肉球っぽく見えるところをナメナメして、顔や自分の耳のあたりを拭くような仕種をするんですよね。もう、その仕種が可愛いったらなくて……そんで、この子ははこべとかタンポポの葉っぱの部分がとても好きな子だったんですけど、まあ基本的にエサとしてはペットショップで売ってるラビットフードをあげたりとかしていて。。。
んで、犬のほうはシーズー犬を飼ってたんですけど、まーほんと、顔というか、容姿がいい以外にはなんの取り柄もない駄犬でねえ(笑)でも、我が家にとっては世界で一番可愛い犬でした
まあ、シーズー犬というと鼻のあたりが潰れてる軽くブチャいくな犬☆っていうイメージがあると思うんですけど、飼い主の欲目とかじゃなく、うちの子はすごく可愛かったです♪最初は「ご主人に似てブチャいくですね~」とか言われそうで、どうせ飼うんなら別の犬がいいな……とか思わなくもなかったんですけど、会いにいったらもうこれが可愛くて可愛くて
犬とか猫とか飼ってる方の多くがそうだと思うんですけど、「もう~、どうちてキミはこんなにかわいいんでちょう!」とか「キミは自分が可愛いことを知ってるでちゅね?そうでちゅね?そんなかわいいわんちゃんには、エサをあげまちょう!」とか……まあ、傍から見る分にはただのアホ☆にしか見えんわけですが(笑)、そんなふうに犬としゃべってる時が自分自身、一番癒される時間でもあるという。。。
もっとも、うちの犬は最初のうち、そんな馬鹿な飼い主にもつきあってくれるのですが、エサをわたしの手から奪ったあとはたたたっ!と走っていって、「へっ!人間なんかまったくチョロいもんだぜっ!!」とばかり、鳥のササミなんかにがっついてましたっけねえ(笑)
そういえば、これもかなりどーでもいいのですが、昔何かの豆粒みたいにちっちゃな賞に、
ずっしりと重いシーズー犬、しずしず歩いてとっても静か。
みたいのを応募して、500円分の商品券か何かもらったような記憶があります(ほんとにどーでもいいよ☆)
まあ、しょーもない駄文で申し訳ないのですが(汗)、なんにも書くネタ☆思い浮かばなかったもので……ええと、次回はなんだっけな。確か、マクフィールド家で犬を飼うのか飼わないのか的な話だった気がします(^^;)
それではまた~!!
聖女マリー・ルイスの肖像-【31】-
その後、ロンは以前のように突然食が細くなったりすることもなく、毎日どうということもないといったような単調さで学校へ通っていた。これはロンがあとから友人らに聞いて知った話だが、ジョンはロンから突き飛ばされて塀から落下した時、捻挫して泣きベソをかきながら家に帰ったのだという。
おそらく状況全体の惨めさとしては、捻挫したジョンよりもロンのほうが重傷だった気がするのだが――その後、ジョンは学校を一週間ほど休んだ。そしてこの一週間という時間がおそらく彼には致命的だったのである。その間、クラスの男子も女子も、ジョン・テイラーのいない天国というのをすっかり満喫してしまった。そのせいもあってか、ジョンが登校してきた時、以前ほどの強さも不気味な魔力なようなものも、彼の背後からは消えてしまったのである。
とはいえ、彼には腹心の配下といったような生徒がふたりおり、彼らは悪魔に忠誠を誓ったしもべよろしく、ジョンの言うことをその後も聞き続けていたようだが、その影響力と脅威とは随分小さなものになっていたといえるだろう。また、このことがあってから、副担任のケリー・ローズも、ロンのことを明らかに贔屓しているとわかる態度を取るようになっていた。何故といって彼の英雄的行為のお陰で自分もマクドナルド先生も余計なことに手を焼く必要がなくなったからである。
また、贔屓しているといっても、それは他の生徒の目から見て度を越しているといった感じのものではなく、ロンが相手ならそれも仕方なかろうと、他のクラスメイトも納得できる範囲のものだったといってよい。
こうしたわけで、ロンはジョン・テイラーから以前として「いるだけでなんとなく嫌な感じ」という雰囲気を受けはするものの、ショーンや他の友人たちに囲まれて、毎日を楽しく過ごすことで――彼のことはそんなに気にしないで済むようになっていた。最初は「仕返し」ということを多少恐れないでもなかったが、「あいつが泣きベソをかくところをロンにも見せてやりたかったよ」とみんなが口々に言うのを聞き、またジョン自身の存在が小さく見えるようになったこともあり、ロンは彼のことを視界に入ってきても「いないもの」として扱うのにかなりのところ慣れていったのである。
「みんな、ぼくがあのあとどうしたかって聞きたがったから、いばらの生垣に落ちて相当痛い思いをしたなんて言わず、ウェザビーさんちの家から出ていこうとしたら、ロットワイラー犬が襲いかかろうとしてきたって話をしたんだ。最初は咬まれるかと思ったけど、実は人懐っこい犬で、顔や手をなめてきたって言ったら、みんなびっくりしてたよ。『ロンは本当に勇敢なんだなあ』なんてね。ほんとは全然そんなことないんだけど、みんなぼくのことを置いて逃げだしちゃったんだし、まあそういうことにしておいてもいいかなと思って」
もちろん、ショーンも、エディやアーサーもみんな、あとからあやまってくれた。ウェザビーさんの家の前を少しの間うろうろしてたけど、ウェザビー夫人には「気違い」という噂があるもので、見つかったりしたら大変だと思って脅えていたのだという。
「それでね、ジョンの奴がロットワイラー犬に手や顔をなめられただなんて、そんなの嘘に決まってるなんて言うもんで……ぼく、今度はそのことを証明することになったんだよ。そしたら、やっぱりあいつ、尻尾を振りながら前とおんなじようにしてたんだ。ジョンの泣きベソは見損ねたけど、その時のあいつの顔こそ見物だったよ。ぼくはあの時のお礼に、パンを少しばかり犬にやってきた。ショーンもエディも最初はビビってたけど、ほんと、人懐っこい可愛い奴だよ。あれ以来、ぼくたちは学校帰りにあの犬にエサをあげたりするのが習慣になっちゃった。それに、あの犬のほうでもぼくたちが来るのを待ってるみたいなとこがあって、そのことがまた嬉しいんだ」
「そう。よかったわね」
この決闘事件があって以降、ロンは少し大人になったようだとマリーは感じていた。背丈も少し伸び、もはやその必要もないはずなのに、イーサンと一緒にジム通いも続けている。先日、マリーは彼と一緒に出かけていって、スポーツ用品店でトレーニングウェアを一式買ってきていたほどだ。
「それでね、おねえさん。ぼく、思いきってイーサン兄ちゃんに犬を飼いたいって聞いてみたんだ。そしたらさ、『ジョン・テイラーのような奴がいない世界へ行くためにも、おまえは私立校を受けるんだろうが』って言われちゃった。フェザーライルやロイヤルウッドとまでは言わないまでも、セント・オーディア校くらいのレベルを目指すのであれば……ぼくがいなくなったあと、犬の面倒は誰か見るんだだって」
「…………………」
マリーはこの件については即答しかねた。簡単にロンの不在の間は自分が面倒を見るとは言えない気がしたからだ。
「えーっ。そういうことならわたし、飼うんなら猫がいいな」
ココがおかわりの紅茶をポットから注ぎながら言った。ミミは幼稚園から、ランディとココとロンは学校から戻り、みんなでおやつを食べていた時のことだった。
「俺は断然犬がいいな」と、ジャムドーナツを頬張りながらランディ。「セントバーナードとかゴールデンレトリバーとかシベリアンハスキーとか……とにかくなんでもいいからでかい犬がいい」
「ぼくは小型犬がいいんだけどな。チワワとかミニチュアダックスフントとかさ、ミミが遊ぶのにもちょうどいいだろ」
ロンがそう言うのを聞いて、ミミはにぱあっ!といかにも嬉しそうな顔をした。これまで、おねえさんとヴィクトリアパークを散歩している時に、可愛い服を着たチワワや耳のところにリボンをつけたダックスフントなどによく会っていたからだ。
「おねえさんは飼うとしたら、犬と猫、どっちがいいの?」
マリーを自分の味方につけたくて、ココはそう聞いていた。
「そうねえ。わたしは結局、犬でも猫でも、飼ったらどっちでも可愛いんじゃないかしらと思うけど……」
本当はマリーは猫派だったので、ココの味方をしてもいいはずだった。けれど、もし何かペットを飼うとしたら、自分が面倒を見ることになるというのは火を見るよりも明らかであり、自分が大型犬のリードを引いている場面や、下痢をした猫の始末などをしている場面が思い浮かび――彼女の返答はどっちつかずのものになっていたのである。
そしてこの時、玄関のほうでシャラアン……と妖精の鈴が鳴り、イーサンの帰宅を知らせた。彼は他の子供たちがいつもそうしているように、真っ直ぐダイニングへやって来、まずはテーブルの上からチョコクッキーを一枚とって食べる。
「イーサンにいたん、おそとから帰ったら、まず手を洗ってうがいしなきゃメッ!なの」
うさしゃんに怒ったような動作までされて、思わず彼は笑った。
「そうだな。まあ、それじゃあちょっと手を洗うか」
イーサンはキッチンのところで軽く手を洗うと、自分の席につき、この日もレポートを書くための読書をしつつ、マリーがコーヒーを淹れてくれるのを待った。ところが、彼も弟妹らの視線が自分に集中しているのに気づき、ふと顔を上げる。
「……なんだ、おまえら。何か俺に話したいことでもあるのか?」
ニーチェの生涯について書かれた本を閉じると、イーサンはランディやロンやココの顔を順番に見渡していく。
「イーサンはさあ、もし飼うとしたら犬と猫、どっちがいいの?」
「それを俺に聞いてどうする?第一、俺には犬も猫もどっちも飼う気はないからな。もしおまえらの間で犬を飼うか猫を飼うかで揉めてるっていうんなら、そりゃ無駄な議論ってものだ。その他、ハムスターでもモルモットでもなんでもいいが、どうせ結局面倒見るのはマリーだろ?そんな余計なことをして、おねえさんのことをこれ以上煩わすんじゃない」
イーサンの物言いがいつものとおり断固としたものだったので、ロンもココもランディも、顔を見合わせて溜息を着くと、この話はこれまでということがわかっていた。『じゃあ、おねえさんがもしいいって言ったらいいの?』とまで聞く者は誰もいない。
「はいはーい!!ミミはねえ、わんさんもにゃんたんもいらないの。飼うとしたら、うさぎさんがいいでーす」
「ミミには可愛いプリンセスうさしゃんがいるだろ?それに、うさぎを抱っこしたかったら、そのうちまた動物園へ連れていってやる。それで我慢しろ」
「にいたん、本当!?ミミねえ、またペンギンさんの行進が見たいな。あと、イルカさんやアシカさんのショーでしょ、白クマさんもね、おっきくてとっても泳ぎがおじょうずなの。ミミ、将来はきっと動物園ではたらく人になってね、動物園に住もうと思ってるのよ」
ミミのこの将来の夢を聞いて、イーサンは笑った。ユトレイシア動物園は冬でも閉園せずに営業しており、その時イーサンはマリーとちょっとしたデート気分を味わっていた。ランディとココとロンは動物園に一切興味を示さず、その結果ミミだけを連れてあちこちの展示やショーなどを見てまわることになったからだ。
「動物園へはそのうちまた行ってもいいけど」と、マリーがイーサンにコーヒーを渡しながら言う。「でも次は、出来れば春くらいのほうがいいわね。ミミちゃんが風邪をひいたりしたら大変ですもの」
実際、顔を蒼白にして鼻水を垂らしながらも、ミミはあっちの動物、こっちの動物と見たがったため、次の日には熱を出して幼稚園を休んでいたのだった。
「そうだな。次に行くとしたら春先だな。そしたら、冬には見ることの出来ない他の動物もたくさん見ることが出来るだろうし……まあ、うさぎか。確かに犬や猫よりはうさぎのほうが飼育は楽かもしれんな。実際、柵を囲ったうちの庭に放しておけばいいだけの話でもあるし、鳴き声がうるさいってこともないからな」
「えへっ。うさしゃん、もしかしたらお友達ができるかもしれませんよ?」
この話を聞くと、ココは肩を竦めて椅子から下りた。実際、彼女は本当はイーサンが犬派だということを知っている。けれど、もし犬を飼うとなったら毎日散歩へ連れていったりなんだり……それだけでなく、今日の散歩係はランディだろうだの、何故エサをやる係のロンがそれをやってないんだだの、自分の怒る回数が増えるだけだと彼自身よくわかっているのだ。
ココは猫の形のクッキーを最後に口の中へ放りこむと、この話は忘れることにして、モニカの家へ遊びに行くことにした。最近、ココはモニカとカレンと一緒にまた、例のファッションブックの新しいのを作りはじめているのである。
「ぼくも、勉強しよっと」
ロンがそう独り言を言い、自分の飲んだマグカップを下げると、ランディも弟に続いてそ~っとダイニングから出ていこうとした。けれど、イーサンは本に目を落としたままこう言った。
「おい、ランディ。おまえは勉強道具一式持って、今日もここで宿題をやれ。で、宿題が終わったら受験勉強だ」
兄から厳しい顔つきでジロリと睨まれると、ランディは自分の座席に戻って弁明をはじめた。
「ねえ、兄ちゃん。頭の悪い俺に私学校の受験は無理だって。それに、小学校六年分の成績表を向こうの人は全部見ることになるんだし……そんなんで合格できる学校なんて一校もないって俺は思うよ。第一先生だってそう言ってる」
「そんなことはわからん。俺はおまえと一緒にアメフトの映画を見たことが何回かあったよな?あれと同じでな、ベストを尽くしたっていうんならともかく、十分努力もしないうちから投げだすことだけは、この俺が絶対に許さん」
この時、マリーはランディから(おねえさんからも言ってやってよ)という視線を向けられたが、彼女は『味方してあげられなくてごめんなさいね』というような顔しか出来なかった。確かに以前までは、『公立校でいいじゃありませんか』とマリーも言うことが出来た。けれど、夏休みに一生懸命勉強しているネイサンや、今またジョン・テイラーのような生徒がいない世界を求めて私学校受験を決めたロンのことを見ていると――彼女にも何が本当にランディのためにいいことなのかが、わからないのだった。
「あーあ。じゃあさ、やるだけのことは一応やってみるけど、それで駄目だったとしても俺を責めないでよね。ロンの奴はさ、本人もやる気になってるから、もしかしたらネイサンが通う予定のセント・オーディアに合格するかもしれない。だけど俺の場合は一番下のほうの学校にどうにか引っかかるかどうかなんだから……それで駄目なら諦めてって話」
「言い訳はいい。それより早く勉強道具を持ってこい。兄ちゃんだってそんなに暇人ってわけじゃないんだからな」
ランディとイーサンがリビングのほうで勉強をはじめると、マリーはミミを彼女の子供部屋のほうへ連れていった。ミミの存在が邪魔になるというよりも――イーサンの教え方が相も変わらず厳しいものなので、ミミの繊細な心に影響してはいけないと思ってのことだった。
今までもイーサンは、自分に時間のある時にはランディやロンやココの勉強を見てはきた。けれど、ユトレイシアから車で一時間半ほどいった場所に、セブンゲート・クリスチャン・スクールというプロテスタントの教会が建設した学校が新しく開校するという話を聞くと、そこにランディのことを放りこもうと考えたのである。そうは言っても、イーサン自身は相も変わらず無神論者であり、何も弟にだけは立派な信仰心を持ってもらいたいなどと思っているわけではない。ただ、クリスチャンの私学校ということになれば、両親ともに毎日曜は必ず礼拝を守っているといったような、折り目正しい金持ちの子息が集うはずなのである。イーサンとしては、学校初日にランディが「デブ」と呼ばれて心が折れて不登校になるだの、教科書に落書きをされたり、持ち物を隠されたり、あるいは金を巻き上げられたり……そうした脅威から弟を守ってやりたいのと同時、そんなことで学校に呼びつけられて煩わされたくないのである。
確かに、ランディの過去六年に渡る学校の成績は悲惨なものではある。だが、例のノアの箱舟チームのデイヴィッドに聞いたところによると、そうしたクリスチャン校の面接で必要なのは、両親の信仰がはっきりしていて熱心であること、またランディ自身も洗礼を受けており、信仰告白していることなどが重要なのだという。逆に、「どんなに成績がよくても、両親の信仰があやふやだったり、生徒自身が入学前にイエスを受け容れていないということだと、まず受からない」という話だった。
この話を聞くと――というのも、デイヴィッドは息子のことをそちらの学校へ行かせるか、別の私学校へ行かせるかで迷っているということだった――イーサンは日曜の朝はランディのことを叩き起こし、無理にでもマリーやミミと一緒に教会へ行かせた。キリスト教の問答についてはマリーが詳しかったので、彼女をランディと一緒にセブンゲート・クリスチャン・スクールの面接に行かせようと、イーサンはそのように目論んでいたのである。
「俺がロイヤルウッドの寮にいる時も、そういう手合いのお坊ちゃんってのは随分いた。あいつらはな、聖書の原則に従って行動するから、理由もないのに暴力をふるったり、他人をいじめたりとか、基本的にそういうことはしないんだ。そのかわり、日常生活でどんな時にイエスを感じるかだの、普段からしょっちゅう聖書の句を引用したりだの、そういうところが鬱陶しいが、そこさえ我慢できれば、つきあっていくのに悪い奴らではない」
勉強の合間合間にしょっちゅうそう言っては、イーサンは「これがおまえにとって最後のチャンスだ」とランディに言い聞かせた。これからの学校生活が天国になるのも地獄に変わるのも、今のおまえの頑張りにかかっているんだぞ、と。
そして、残りの精神的な詰めに関しては、アメフトの映画を何本も一緒に見て弟を洗脳することにした。というのも、アメフト映画には不可能を可能にしたチームだの、ずっと負け続けた弱小チームが連戦連勝した奇跡だの、そんな話が多いからだ。イーサンは体格的に、ランディはそれなりに修練を積めばいいラインマンになるだろうと思ってはいたが、この場合はランディをアメフトの選手にするのが目的ではない。クリスチャンの私立校にランディのことをぶちこみ、彼がその後六年平穏な学校生活を送り――三流校でいいから、彼が大学に進学してくれることがイーサンにとっては兄として大切なのである。
「でもさあ、そこって結局、寮に入らなきゃいけないんでしょ?」
「まあ、全寮制らしいからな。だが、土日だけはこの屋敷に戻ってこれる分だけ、遥かにマシだぞ。ロンなんか、もしセント・オーディアに合格したら、休暇の時しか戻ってこれなくなるからな。だが、セント・オーディアの卒業生だっていうのは、あいつの一生にずっとついて回ることだから、将来的にはそれで良かったと本人も思うことだろう」
「…………………」
正直なところをいって、一時間半かかってでも、毎日家に戻ってこれるなら、ランディとしてももう少しやる気になれる。けれど、寮生活をはじめたら、九時には必ず就寝しなければならないだの、色々守らなくてはいけない規則が出てくることだろう。そう思うとランディは心が重くなったし、何よりケビンもブラッドも普通の公立校へ進学するのだ。たとえ別々のクラスになるのだとしても、ランディは彼らと同じ学年でありたいと思っていたというのもある。
けれど、相手がマリーおねえさんならともかく、兄のイーサンが一度こうと決めたからには、その決定にランディは逆らえないとわかっていた。それに、お金持ちの品行方正な子たちが多いから、いじめのリスクを下げられるということにも、魅力を感じるところはあるにはあった。
なんにしてもとにかく、英語の文法やら、ユトランド共和国の歴史やら、算数の分数と小数点の計算やら、暗記できるものはとにかく暗記し、「何故こうなるのか」理解できないまでも、算数については計算の法則性をとにかく覚えこもうとした。以前はよく、「なんでここで分母がこうなるの?」だの、色々と理屈を並べたてたランディだったが、最近はとにかく詰め込み式に出題パターンと法則性のほうを重視して教えられることが多くなっていたといえる。
夕食の時間になるまでこれが続き、イーサン自身の時間のある時には、食事が終わったあとも勉強することがよくあった。ランディはとにかく早く勉強を終らせてゲームがしたくて仕方なかったが、そんな弟にイーサンはこんな話を聞かせたものだった。
「いいか、ランディ。俺がなんでテレビゲームはおろか、携帯ゲームさえしないかわかるか?」
「えっと、なんだっけ。クォーターバックはフィールドをなるべく遠くまで見渡さなきゃいけないポジションだからとか……そういうことだよね?」
ランディはマリーが淹れてくれたお茶を飲みながら言った。頭を使って疲れたので、チョコレート菓子をひとつ摘んで食べる。
「そうだ。俺は十一の時まで、誰が自分の父親か知らなかったし、家のほうも貧乏だった。だから、家にはゲームなんて買ってもらえるような余裕もなかったし、そういうのを当たり前みたいに持ってる友達が羨ましかった。けど、そのかわり野球とかアメフトとかな、それならそれで別の楽しみが出来る。それで、俺にとってはそれで良かったんだ。ゲームは面白いし楽しい。たけど、優秀なクォーターバックは視力がいいに越したことはないんだ。もちろん、スポーツ眼鏡とか、そういうのをつけてプレイしてる選手もいるがな……とにかく、そういう自分が本当にやりたいと思える目的さえあれば――おまえが今は中毒みたいなってるゲームでさえやめられる。今はそんなふうに思えなくても、より崇高な人生の目的さえ見つかれば、自然とそうなるんだ」
イーサン自身はゲームの面白さについてはよく知っているため、弟たちにそれを禁止しようとは思っていない。誕生日やクリスマスにも、そうしたプレゼントをしたことはこれまでに何度もあるし、今もゲームをやめろといったようには思わない。だが、もっと他にその分の時間を使ったほうが……もう少しバランスの取れた時間の使い方を弟がしたほうが、将来的に彼のためになるだろうと思っていた。
一方、ランディはいつもながら兄の説教について感心してはいたものの、『自分とイーサン兄ちゃんとではそもそも最初から出来が違う』との思い込みがあるため、何かの目的(たとえばダイエットなど)のために何か制限する努力をするといったことは、まるで自分向きでないとしか思わなかった。それに、その時々で楽なほうへ流されて何が悪いというのかも、ランディにはまるで理解できていなかったのである。
ただ、とにかく家長としての兄には言い逆らえないことから、唯々諾々と従っているに過ぎないのだった。
>>続く。