先日このブログでSTSという言葉を書きました。STSとはScience, technology and societyの略で、日本では「科学技術社会論」と訳されています。科学・技術が社会に及ぼす影響および社会が科学研究や技術開発に及ぼす影響を考える学問です。例えば原子力に関する科学技術は現代の社会にあらゆる意味で甚大な影響を及ぼしています。良い影響もあれば悪い影響もあり、これにどう対処していくべきか、いよいよ重大な問題になっています。インターネットなどのITも、私たちの暮らしや文化に及ぼす影響は甚大です。ネット上の知的財産権や人権の在り方など、検討すべき課題は山積しています。1990年代以降は、生命科学の進歩が、社会に及ぼす影響が増大しています。出生前診断や男女の産み分けなどのリプロダクティブヘルス、遺伝子組み換え食品やクローンなどの技術を社会に広く導入すべきか否かは多くの論議が今日もなされています。
今日も、日経ビジネスONLINEにびっくりするような記事が掲載されていました。何と99ドル(1万円弱ですね)で個人の遺伝子を解析してくれるサービスがアメリカで始まったそうです。シリコンバレーのベンチャー23andMe(23アンド・ミー)という会社が始めたサービスで、この8月から全米でテレビコマーシャルも始まったそうで、すでに30万人の顧客を集めているそうです。
ソースです ⇒ http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130930/254028/?n_cid=nbpnbo_bv_ru
方法は簡単で、自分の唾液を専用の容器に入れて、23アンド・ミー社に送ると4~6週間で解析が完了し、自分専用のホームページで、結果を閲覧できるのだそうです。これで何が分かるかというと、肺ガン、アルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病、統合失調症など「病気のリスク」や、C型肝炎治療薬、てんかん薬、経口避妊薬といった「薬などへの反応」ほか、得られる情報は200項目以上あるとのことです。こういうことが9000円ちょっとで出来るとは!人間の遺伝子、ヒトゲノムの解析に成功したのは2000年のことでした。つい13年前のことです。大ニュースとして世界をかけ巡ったことは最近のことのように覚えています。当時一人の人間の遺伝子を解析する費用は95億円もかかったそうです。そう考えると上のニュースは本当に驚くべきことです。この5月には、女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、遺伝子検査で乳ガンにかかるリスクが極めて高いことが判明したため、乳房の予防的な切除を決断したことが大きく報じられていました。アメリカではこういうことが、ごく普通に行われるようになっているようです。 (続く)