博多住吉通信(旧六本松通信)

 ブログ主が2022年12月から居住を始めた福岡市博多区住吉の生活や都市環境をお伝えします。

海中の飛行船

2023年06月27日 | 科学
(昨日の続きです)
 一昨日にご紹介した、ビービ博士とバートン氏の潜水球(バチスフェア)は海上の支援船からケーブルで牽吊されるため、海中での自由な移動はできません。一方、昨日ご紹介したバチスカーフ・トリエステ号は自律した潜航・浮上・ある程度の前進が可能です。上の写真は発明者のオーギュスト・ピカール教授の支援の下でフランス海軍が建造したバチスカーフ・FNRS-3です(注)。FNRS-3は、昭和33年(1958年)に日仏合同の日本海溝学術調査のために来日し、宮城県の女川町を拠点に深海探査を行っていました。
 バチスカーフの船体は巨大な浮体と人間が乗り組む耐圧球殻で構成されています。浮体には水よりも軽い液体-通常はガソリンーが充填されています。このように浮体内部は液体で満たされているので超高水圧を跳ねのけることができます。この浮体の浮力でバチスカーフは海面と海中で浮かぶことができます。そして深海に向けて潜航するために9トン分の鉄球がバラストとして積まれています。浮上する際にはこのバラストを切り離すことで浮上できます。トリエステ号の場合は、鉄球のバラストを電磁石で船体に付着させているので、もしも電源喪失のような緊急事態に見舞われた場合は即座にバラストが切り離されて緊急浮上できるようになっています。この仕組みは空に浮かぶ「気球」と同じです。つまりバチスカーフとは海中に浮かぶことのできる気球なのです。電動推進機で自律航走もできますので、海中の「飛行船」といえるでしょう。これがバチスカーフの発明者のオーギュスト・ピカール教授がスイスという海のない山国の出身でありながら、この画期的な深海潜航艇を発明できた理由です。ピカール教授は元々は高高度成層圏気球の開発者だったのです。1931年5月27日にピカール教授は自作の直径30 mの大型水素気球FNRS-1に搭乗しドイツのアウクスブルク上空16,000 mの成層圏に到達しました。人類史上初の成層圏への到達であり、遥かな宇宙空間への入口の入口に人類が辿り着いたという偉大な業績でした。その後も、教授は自らの高度記録を更新し続け、最高高度記録は23,000mだったそうです。これらの飛行で宇宙線やオゾン層の観測を進めることができたということです。
(注)FNRS-3の写真はウィキペディアから引用させていただきました。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。