ピラティススタジオ”フェルマータ”

2014年より板橋区・高島平および三鷹でピラティスクラスを開催。充実感のあるクラスを実践しています。

マインドフルネスについて。

2017-11-15 21:53:59 | マインドフルネス
昨日の日記のなかで触れられているようなある種の「気づき」を、
「マインドフルネス」あるいは「マインドフルな状態」と表現することがあります。

 例えばピラティスワークを行う際は、身体の各部分を意識しながら、動きの
瞬間瞬間の変化に注意を傾けることが大切です。

 呼吸に集中しながら「今ここ」の状態を意識すること。

 過去のことに固執せず、未来のことを思い煩うことなく、純粋に連続する「今」を
捉え、身体が伝えてくる感覚に耳を傾けること。

…いつもクラスで行っているピラティスワークのなかにも、マインドフルネスの実践が
多く含まれていると感じます。

 「マインドフルネス」の提唱者の一人であるティク・ナット・ハン氏は、その著作
のなかでこう述べています。
(『ブッダの幸せの瞑想』サンガ社より、以下長いですが引用いたします。)


マインドフルネスは、今この瞬間に気づき目覚めているというエネルギー
です。それは人生に深く触れることを、一瞬一瞬くりかえしていく実践です。
そのためにどこか特別な場所に行く必要はありません。自分の部屋の中でも、
どこかへ移動する途中でもできます。しかも、私たちが日常生活でいつも
しているのとほぼ同じことを通して行います。歩く、座る、働く、食べる、
話す…。ただし違うのは、それらをしっかりと自覚して行うことです。

 ひとつの例をあげましょう。あなたは数人の仲間とともに美しい日の出を
眺めています。ほかの人たちは景色を楽しんでいるというのに、あなたの心は
苦しんでいます。頭がいろいろな計画や心配ごとでいっぱいで、過去や未来の
ことばかり考えているからです。日の出を見ようにも、あなたはそこにいません。
そして、すばらしい日の出の瞬間を楽しまずに見過ごしているのです。

 ここで、少し違うアプローチをとってみましょう。とりとめのない思考が
起こったとき、意識を吸う息と吐く息に向けてみたらどうでしょうか。
まずは深く呼吸して、今この瞬間に自分を戻します。すると体と心はひとつ
になり、あなたは美しい景色を目のあたりにし、しっかりと眺め、楽しむ
ことができます。自分の呼吸に「帰る」ことで、あなたは日の出の美しさを
取り戻すのです。

 (…中略)

 人生の恵みを本当に味わいたいのなら、生活の様々な場面でマインドフルネス
の瞑想を活用することです。歯を磨きながら、朝食をつくりながら、車を運転
しながら、仕事に向かう途中で、ぜひ試してみてください。あなたの一歩、
一呼吸が、喜びと幸せを呼ぶチャンスになります。
人生は苦しみに満ちています。幸せをじゅうぶんにたくわえておかないと、
失意におそわれたときに打つ手がありません。どうぞリラックスして、やさしい
気持ちで実践してください。(…中略)マインドフルネスを生かせば自分の中に
喜びを保つことができ、人生の荒波にもっとうまく対処できるようになるでしょう。
自分の中に慈しみと自由と平和の土台をつくるのです。 

 私たちは、いっけんなんでもないような日常の生活とそれが与えてくれる恩恵を、
ほんとうに受け取って生きているのでしょうか?「いま・ここ」にしっかりと根を
下ろし、呼吸とともに、微笑みながらそれを迎え入れた時、目の前にはきっと
いままでとは違った景色が広がっていることに気づくでしょう。

 筆者は1926年生まれの、ベトナム出身の禅僧です。
平和運動を実践しながら、マーティン・ルーサーキング氏の盟友となり、また
ベトナム反戦運動に積極的に参加した経歴があります。
91歳の現在もフランスを中心に活動されています。





意識の側でできること。

2017-11-14 23:02:41 | 日記
寒くなってきましたね!電車内で咳をしたりマスクをしたり
している人を多く見かけると、風邪が流行っているんだな・・、と実感します。

 "なんか変だな"と思ったときは身体の方ではすでに不調や異変が進行していた、
ということはよくありますね。気づいた時にはすでに遅し、「身体が先」で
「意識は後」にやってくる、という知覚パターンは私たちの脳=神経システムの
仕組みからいっても不可避のようです。

 わたしたちは自分の細胞や免疫システムはおろか、自分の手や脚が体のどこに
位置しているか、ということでさえ、時に無自覚になり、コントロールを失って
しまうものです。

 …しかしながら、日頃から「身体」と「心」をひとつの全体としてとらえて
実践する者にとっては、なんとかしてこのパターンを変えられないものか、と
思うのです。

 少なくとも身体に異変が起きた時に、それを自覚しても慌てないでいられる
ほどの準備(=対処の仕方やアプローチ方法、視野の取り方、自分の感情との
距離の取り方)を持っておくことはできると思うのです。


 先日クラスである生徒さんが、興味深いエピソードをお話しくださいました。

 先月は大きな台風が日本列島を縦断しましたが、その方はちょうど折悪しく飛行機に
乗っていたそうです。乱気流により上下に大きく揺れる機内に居て、胸が気持ち
悪くなり、咄嗟に「胸の違和感をお腹の下に下ろす」ようなイメージで下腹部に
力を集めたそうです。

 お腹に位置するシートベルトがちょうどよい目安になったことで、そこから
「骨盤をCカーブ方向に傾けてお腹を入れる」というふうにすると、胸の違和感は
緩和され、シートの上にしっかりと座骨をつけて座っている状態が作り出せた
ということです。


 実際に誰もが不安になる状況にあって、平常心を保つことができる、ということは、
意識の側からみればとても大事なことだと思います。
(すこし大げさかもしれませんが、その場にいる全員の意識が同じ不安のベクトル
を向いたときに起こるであろうことと、そのなかの一人が冷静でいたことで回避
されうるできごと…そのようなことをつい連想してしまいます。)

 ともかく、ここで大切なポイントは、

・身体(胸)の違和感に気づけたこと。
・対処の方法を探ろうとしたこと。
・実際にそれを見つけて実践したこと。

 という気づきのプロセスなのだと思います。
予測のつかない気象条件、限定された身体環境などといった状況は変えられない
けれど、

「それを体験する自らの状態は変えられる」

ということを示してくれたのだと思いました。




頸の後ろをのばすこと。

2017-11-09 21:42:47 | 日記
寒くなりましたね!木の葉も綺麗に色づいています
さて、今日は「頸の後ろを伸ばす」というテーマに迫ってみたいと思います!

 人間の頭はボーリングの球と同じぐらいの重さだと、よく言われています。
位置を考えると、頭部は身体のなかでも一番高いところにあって、さらに頸椎の
小さな骨でそれを支えるのですから、どうしても不安定になります。

 特に長時間、同じ姿勢で眼を使う方などは、疲れると頭が前に傾き、
それにつられるようにして左右の肩甲骨は外側に開き、前側の胸は詰まりがちに
なります。


背中側から見た図。丸で示したところが緊張する。

 結果的に、肩や首にだるさ・重さが生じてしまうのです。
筋肉で見ると、主に以下の二つの部分が引っ張られて緊張している状態です。

僧帽筋は主に上のほう。後頭部から背中を引っ張ることで不調が生じます。


肩甲挙筋。頸椎から肩甲骨の上部に繋がっています。

 不調を感じている方は、このあたりの筋肉に、なんとなく思い当たるフシがある
でしょうか・・?

 一方で、「前に出ている頭部を引く」ために、積極的に使いたい筋肉があります。

胸鎖乳突筋。
耳の後ろに丸い小さな丘のような硬い骨(乳様突起)があります。
そこから鎖骨に繋がっている筋肉が、胸鎖乳突筋です。
身体の前側についているので、触ったり鏡で見たりなどして、比較的確認しやすい
筋肉です。


 ・まずは背中を壁につけてみましょう。
「頭部を後ろに引く」というと、顎を上げてしまう方が多いのですが、
顎はすこし引くようにすると、頸椎は引き伸ばされます。
そのまま後頭部を水平に壁に押してみましょう。

うまくいけば矢印のように、後頭部は後ろに、反対に胸は前に開くことができます。


さらに後頭部で壁を押したまま、首を左右に振ると、胸鎖乳突筋が出てきます。

バレエダンサーの頸などを見ると、この部分がよく発達していますよね。
もし電車に乗って運良く座れたら、後頭部で窓を少しだけ押してみましょう!
前に傾きがちな頭部を、より負担のかからない位置に修正することができます。

 誰にも気づかれずにピラティスの実践ができるでしょう






身体の声を聴く。

2017-11-08 20:49:40 | 日記
ごく個人的な話しですが、20代の頃はよく旅をしました。
ヨーロッパ、アメリカ、アジア圏など、公演で訪れた場所ではいくつか印象的な
経験をしましたが、期間や目的を限定しない一人旅はもっと贅沢で、出会いや発見が
たくさんありました。

 私にとって最も印象的だった場所は、意外にも日本にありました。
20代の半ば、まだ進むべき道が漠然としていて、自分の中に渦巻いている
エネルギーと周囲の状況がまったく一致しない、ちぐはぐな状態にありました。
たまたま父の地元が熊本だったため、同行したのち、足を延ばして沖縄に行こうと
思いたちました。南国のなんともいえないゆっくりとした時間と、どんな人でも受け入れ
る嬉しくなるような包容力、その対極にある、歴史の悲劇と闇の力。
いつしかその土地に魅せられ、何度も通うようになりました。

 旅は沖縄本島にとどまらず、その後、久高島、宮古島、石垣島、西表島、竹富島、
といった小さな島々を巡ることになります。
水平線の向こうに横たわる島々を転々と移動しながら色々な人たちと出会い、また
独りの時間を持つことで、これまで無意識に自分のなかで蓄積してきた感情が、
時とともに徐々に解きほぐされていきました。
 
 そうして最後に辿りついた場所は最南端の島、波照間島でした。
平べったく続く島の陸地が突然途切れる場所、最南端の断崖絶壁に立ち、眼下に
拡がる波をじーっと見つめていると、さまざまな気づきがやってきたのです。

 飛沫を上げながら表面に刻まれる小さな波の山々が、その下のちいさなうねりに飲み
込まれてかたちを失う様子。そのうねりもまた、より大きくゆったりとした波のうねり
によって姿を変え、さらに海の底からやってくる大きなうねりによって全体の動きが
絶えず変化させられる様子。それらひとつひとつを合わせた経験の総体を私たちは
「波」と呼んでいて、同時にどんな小さな「波」も全体の波と密接に関係しあっている
ということ…。

 その様子を見ながら、いつしか私は涙を流していました。
そこで私ははじめて、普段ため込んでいた感情を自覚し、開放することができたのです。


 ダンスやピラティスといった身体技法に携わっていると、”身体のこえを聴く”という
言い方をよく耳にします。それは、「これまでずっと声を上げていた感覚があるんだ」と
いうことに、あらためて気づいてあげることを意味します。

 小さな声(=感覚)への気づきは「全体」に影響を及ぼし、「全体」を活性化させる
こともあるでしょう。一方これまで支配的だった大きな声(=感覚)はいつしか小さな声に
姿を変えて、再び相互に浸透していきます。
そうやってひとつの身体という経験を織り込んでいくのです。
少なくともそう信じることで、色々なものごとを肯定的に受け止められるようになりました。

 それが島の旅で教わった大事な秘密、でもありました。



子育てのことなど

2017-11-06 17:01:42 | 日記
妻が妊娠した時、たまたま書店で一冊の本が目にとまりました。

「おなかの中からママとパパを見ていたよ 心がホッとする胎内記憶の奇跡」
池川明著 主婦の友社

 横浜のクリニックの院長として2800人のお産を手掛けた医師による、
胎内記憶に関する感動的なエピソードが書かれています。

 なかでも不思議なことは、赤ちゃんは自分で意志をもってこの世に
生まれてくるんだ、ということが語られていることです。

 どうしてそのお母さんを選んだのか、聞いてみると
「かわいいから」「やさしそうだから」という理由が多いようです。

「向こうの国には子どもたちがたくさんいて、『かわいいからあのママがいい』
とか『やさしそうだからあのママにしようかな』とかみんなで言っているよ」

(中略)

そして、「お母さんを助けてあげたくて生まれてきた」と言う子どもたちもいます。

「お母さんとお父さんは、子どもが生まれないと、すぐにけんかをしたり離婚を
する可能性があったの。だから、ぼくがそれをとめないとと思って生まれてきた
んだよ」
「嫌なことがたくさんあった人、つらいことがたくさんあった人のところに、
喜ばせにきたんだ」
「お母さんが泣いていて寂しそうだったから、ぼくがきたら笑ってくれると
思ったの」

 生まれる前に「向こうの国」に居て「みんなで」私たちのことを見ている
のでしょうか・・・?真偽のほどは確かめようもないですが、その子がほんとうだと
感じているのならば、やはりほんとうのことなんだと思います。
 
 私には残念ながら胎内記憶がありませんが、ひょっとしたら何かの折に、
ふと思い出すかもしれません。そして、何のために生まれてきたのかと聞かれたら、
きっと本書に書かれている子供たちのようにとてもシンプルに、”人の役に立つため”
と答えるかもしれません。

 子供がわけもなく笑っているとき、泣いているとき、きっと私たちが思っているよりも
多くのことを感じているのかもしれませんね。