将棋界のあれこれが書かれている本です。
著者は、プロの棋士です。
私は将棋が好きなので、将棋界については詳しいつもりですが、その世界を中にいるプロが語っているので、とても面白い本です。
大山、中原、谷川、羽生という人たちの人間を比べる論評がとても興味深く感じました。
いろいろ感じる部分がありましたが、一つだけご紹介すると、強さは大いなる嫉妬だということが書いてありました。
成程と思いました。
嫉妬は時に、活力になる。
「講演が上手くなると、将棋が弱くなる」とは大山先生の言葉です。
舛田や米長が話が上手で、マスコミでもてはやされることに嫉妬しての発言だと著者は書いています。
それに対して、自分は本業で勝負するということなのでしょう。
これは、中原にも谷川にも言えることだと言っています。
将棋の強さより、テレビで脚光をあびる騎士がいるということでしょうか。
しかし、その歴史を変えてしまったのが、羽生だと。
羽生は、コマーシャルにも出ますし、様々なイベントでも引っ張りだこ、羽生が来ると言えば、女性ファンが殺到する。テレビにもどんどん出る。それでいて、将棋も一番強い。羽生はマスコミに出ることが将棋界の発展に寄与することだと考えているようです。
この本は、羽生が23歳の時、七大タイトルを独占するのではないかという年で、最後の王将を三勝四敗で逃した後でした。もう七冠は無理だろう、あるとしたらもう何年か後だろうと書いてありました。
しかし、この次の年にそれを実現してしまいます。6つのタイトルをすべて防衛して、最後の王将を谷川から奪って実現しました。
それ以前にもその後も七冠はいません。
大山、中原の全盛期なら、それもあったかもしれませんが、そのころは、五大タイトルでしたから。