運命と出会う瞬間

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ふたつの風 ー風のバイオリンー

2007年06月25日 09時49分27秒 | Weblog
バイオリンというよりチェロを聴くときのような感じだ。
目の前で弾いてくれているのに、古い蓄音機から聴こえてくるように、そして蓄音機には、現在のCDのようなデジタル化された音からは排除されてしまう周囲の空気の気配が混在していたように、そのバイオリンから響く音には風がまとわりついていた。・・偶然、6年振りくらいに聴いた盲目のバイオリン奏者、穴澤雄介君の奏でる音は、たくましく、しかしナチュラルに、太い幹のようになっていた。
 きけば最新アルバムをもって全国デビューしたという。すべてオリジナル曲で構成されたそのアルバム名は『あの木に寄りかかって』。
想いや感じることを植物や自然界のものを通して作曲するという彼のメロディーは、人生の深みを感じさせながら、それを明るく処理させる天然の美しさ、メロウさがある。
タイトル曲『あの木に寄りかかって』は、幼くして母親とは生別し、兄弟三人で父親に育てられた彼の、父親への想いが奏でられている。私は、その曲を聴きながら、阿蘇の『風の丘美術館』の大野勝彦さんという義手の画家が思い出されてならなかった。
45歳で、両腕を農機具に巻き込まれ、三人の子供たちを思い浮かべて、まだ死なれん!と自ら両腕をひきちぎって、腕の無い生を選び取った大野氏。すべてを受け止めて、挑戦しながら、自然の中の物を義手で絵と詩に表わし続けている。
阿蘇の麓にあるその美術館の庭にあるケヤキの樹は、大野さんの心の樹だが、そのケヤキに人生と想いを語りかける大野さんの姿が、曲を聴いている間中なぜかオーバーラップして泣けてしまったのだった。そして、その曲が収録された穴澤くんのアルバムを買おうとして、ジャケットを見て再度驚いた!だって、すでに持っている大野さんの詩が朗読されたCDのカバージェケットとそっくり!なのだ。もちろん偶然だ。美しい夕焼け空を背景に立つ一本の木。構図まで同じだ。またまた運命好きな私のアンテナが動き出した。いつか、穴澤クンと大野さんのジョイントを!!・・はてさて、実現はあるだろうか。
ちなみに これが穴澤君のアルバムhttp://www.rakuten.co.jp/onko/499505/1844371/
そして、これが大野さんのもの。http://www2.infobears.ne.jp/oonokatuhiko/ 
大野さんは、先日NHKでも大きく紹介され、来月は二冊の本が同時刊行される。
http://www.sunmark.co.jp/00/special_t/frame_index.html

風の音がするバイオリンと風の丘の美術館。二つの風が全国に吹いてゆく。