日本経済新聞20121207 春秋
「自分が生まれる前に起きたことを知らないでいれば、ずっと子どものままだ――。共和政ローマ末期の政治家、キケロはそう書いた。カエサルの政敵だったというから、2000年以上も昔のことになる。それほどの時を経ても、古びた感じがしない。味のある言葉だ。(中略)▼政治家キケロには日和見とか優柔不断といったイメージもつきまとう。けれど、著作や弁論が後世にもたらした影響は計り知れない。18世紀のフランスの哲学者で、近代社会の基本原則となる三権分立をとなえたモンテスキューも、キケロを踏まえて思索をめぐらせた。やはり歴史に学ばなければ人は成熟しない、と思う。