アフター3.11の企業革新
「未曽有」の連鎖を乗り越えよ 客員コラムニスト 西岡幸一 日本経済新聞20110321
阪神大震災、2004年の新潟県中越地震などに続く今回で大災害の悲惨さを国民がほぼひとしく経験した。誰もが他人の痛みが分かる。家族や社会とのきずな、ボランティアの精神が亀裂が走った日本列島の揺るがない共有資産になっている。消費者はパンとサーカスを享受する物欲主義から離れ、ムダと過剰を排除し省エネ・環境との調和を求める動きが強まろう。
より根本的には2000年代の宿題をきっちり果たした上で社会の変化に応じた新しい企業像を打ち出すことだ。経営の射程を四半期の成果を追う短期から中長期に移し、社会的存在であることを再認識すべきだ。ガバナンス確立とリーダーシップが何より重要なことはこの危機の中での政府と東京電力の挙止が反面教師として教えてくれる。
説明力の無さは命取りになる。疲弊する地域経済を反映して犠牲者や避難者には16年前の阪神大震災と比べて圧倒的に高齢者が多いように見える。高齢化が進んだ16年後に同じような厄災が発生したら、と考えると想像を絶する。