3月26日、国立国際医療センター国際疾病センター主催、「第五回国際感染症セミナー」開催され、インドネシア&ベトナムネタ中心に発表がおこなわれました。
http://www.dcc.go.jp/training/seminar2009_03.html
翌27日から本職関連の学会で上京していた管理人はタイミング良く、これを聴きにゆくことが出来たので興味深い点かいつまんで紹介。
<ベトナム バクマイ病院3症例提示>
(注:バクマイ病院とは、日本がODAで思いきり注力している病院。入れ替わり立ち代り日本の専門家が技術援助に、また同病院関係者が入れ替わり立ち代り日本へ研修に来る経緯あり。03年SARSの時も華々しい日本ーベトナム協力の成果が報じられていた)
ケース1 30歳男性 農業 家禽と共生
2007年5月12日 発熱、咳、胸痛15日 地元病院へ。 発熱、悪寒、咳、喀血、嘔吐、下痢。
鳥フル疑いでバクマイ病院呼吸器病棟へ。 タミフル投与開始。 血液培養陰性(管理人注:血液中に細菌はいないという意味。敗血症が否定されている) 白血球5000~6000(注:この数字はほぼ正常値を意味。細菌性肺炎だったらぐっと増える) 18日ICUへ。 SpO2 74(注:体に酸素が行き渡っているか測る指標。TVドラマなどで指先にセンサーらしきものを付けているのはこれを測るもの。通常90台。80台の数字が表示されたら、医者が「O2 1リットル!」とか叫んで酸素投与の準備がバタバタと進行する。)
同日H5N1の診断確定byPCR、その後快方に向かい、6月14日退院。
教訓:白血球増加なし+肺所見(急速進行)→ 隔離へ。早期診断しタミフル投与。CVVHで生命維持。気胸・不整脈合併多し注意。
ケース2、ケース3 早期診断かなわず(発症7日後治療開始)、薬石効なく・・・という結果になったケース。
教訓:早期診断がカギである。そのために住民教育が重要である。2段階診断。迅速診断キットと正式にPCR法。 迅速診断キットで、省病院(地方医療機関)レベルで診断つくように。
<ベトナムにおける取組み>
ステップ1 教育。
地方をめぐり教育、情報提供活動。鳥接触後症状あればただちに受診を!と意識植え付け。
ステップ2 省病院(地方医療機関)レベルへのアプローチ
鳥との濃厚接触歴を重視、プラス発熱、呼吸器症状あれば、レントゲン所見なくても(ここ強調されていた)疑う。
迅速診断キット(免疫クロマトグラフィ法。日本が供与したもの。謝意表明されていた)ですぐに診断、タミフル開始。
ステップ3 バクマイ病院へ移送。
ポリミキシンB使用し血液浄化法 (注:透析と同じ原理で、感染白血球を取り除くという理屈)。 現在は、抗ウイルス薬はタミフル使用(注:リレンザは吸入式だから使いにくい。意識の無い人は当然吸入なんか出来ないし、認知症のおばあちゃんなんかもうまく吸いにくいというのは以前当ブログでも書いたとおり)。将来的にT705の治験もやってゆく予定。
当セミナー通じて感じられたのは、「現場を踏んでいる人間がものを言っている」実感がビンビン伝わってきたところです。
今回の登場人物のフィールドは「机の上」ではなく「実験室」でもなくH5N1感染者が目の前でもがいている、「ICU」や「呼吸器病棟」、あるいは「ベトナム・インドネシアの農村」。SARSの修羅場でもがいた管理人にとって共感する場面が多かった。
国立医療センター(感染研とは別モノ。念のため)のイベント、今後も要注目です。