ヒッキーはつむじ風!!

ヒッキーが観て気に入った映画を、ブログで紹介します。

「それでもボクはやってない」

2009-07-21 13:47:47 | Weblog
                     「それでもボクはやってない」

この映画も観るのは二度目だが、あらためて凄い映画だと思う。

「痴漢」という軽犯罪が主題になっているが、この作品は「痴漢」だけでなく日本の刑事裁判の旧態依然とした部分を見事に描いている。

警察での取調べも含め、一人の青年がいかようにして「冤罪」の罪を着せられてゆくか、観る者に解りやすく描くことに成功している。

ネタバレ入ります。
ストーリー的には、加瀬亮演じる金子徹平が、超満員電車の中で扉に挟まれたスーツの背中の部分を、右手で引っぱって抜こうとすることが発端となります。

乗り換えの「岸川駅」で降りたところ、中学生の女の子が徹平の腕をつかみ、
「痴漢しましたよね・・・!」
いわゆる「私人による現行犯逮捕」というやつだ。

あれよあれよというまに、徹平は警察署で取調べを受けるはめになった。
やってもいないことを「やりましたと言えば示談金で済むんだ!交通違反と同じだ!すぐに帰れるぞ」

すごいことになっている。実際にこんないいかげんなものなのだろうか・・・。

当番弁護士として徹平と面接した浜田(田中哲司)も、「いっそのことやりましたと言って示談にしたほうが・・裁判で争うとなると、長期間拘留されるし、痴漢の
裁判の有罪率は、99.9%だ。まず勝てる見込みは無い・・」

この99.9パーセントの有罪率というのはどういうことなんでしょうか・・・!?
「現行犯」だからなのでしょうか・・。

結局、徹平は「否認」したまま裁判で争うことになります。

裁判長は、警察や法曹界から「無罪病」と陰口されている大森裁判官(正名僕蔵)
でした。
この大森裁判長は適切な裁判を理論立てて進めてゆきます。

この大森裁判長が司法修習生たちに語った次の言葉に、この映画のテーマそのものがあると思います。
「刑事裁判の最大の使命は、無実の人を罰してはならない、ということです」

刑事裁判の鉄則、「疑わしきは、罰せず」のことです。

映画冒頭に出てくる、「十人の真犯人を逃すとも、一人の無辜(むこ)を罰するなかれ」
これが、この映画で周防監督が言いたかった事だと思います。

日本ではいったいどれだけの冤罪があるのでしょうか・・・?
「疑わしきは、ねじ伏せてでも罰する」という感じが否めません。

映画では裁判長が突然交代になります。
後任の裁判長(小日向文世)は荒川弁護士(役所広司)や須藤弁護士(瀬戸朝香)の発言や要求をことごとく却下してゆきます。

そして判決の日がやってきます・・・。


この作品は周防監督が「冤罪とはこうして造られる」という事を、3年間におよぶ調査、傍聴、関係者からの聞き取りをへてフィルムに焼き付けた、渾身の一作だと思います。