ありふれた人生
もう何も考えまい
君が欲しかったものも
僕が欲しかったものも
生きていくことの愚かささえも…
まだまだ走れそうな状況にない
走れるどころか歩くことさえ…
肉離れを起こしてから5日目
ようやく治りつつあった
足首や膝の痛みにかわって
ぶっ飛ぶほどのふくらはぎの爆弾
慰めのウォーキング8キロ
ふくらはぎにかかったわずかな負荷に
悲鳴を上げて立ち止まる
手を添えて
さすってはみるものの…
こんな状況で走れるのか?
10日後のフルマラソン…
走れるわけないよな…
走れなくっても構わないか?
そうだよ
いつまで走ろうと思ってるのか
この歳になって…
(いくつになった?)
死ぬまで走り続けるのか?
アスリートでもないのに…
たとえアスリートでもさ…
いつかは
みんな…
本当に良いことがない…
4月になったってのに…
カミさんが帰宅してから
相変わらず
家の中は凍てつくような空気
さらに肉離れの痛み
老いた身体をこわばらせ…
なんにしても…
花を見たって
心和むはずもないさ
いまは…
4月は嫌いになった
今年から…
誰かさんたちからのメールも
もう嬉しくない
生きてるのも
そろそろこの辺までか?
Blue Birthday …
カミさんが帰って来た
パリから…
撃沈…
カミさんのメールの指示どおり
空港まで迎えに行ったものの…
ただいまもなければ
おかえりもない関係
それが僕たち夫婦の…
到着フロアでカミさんを迎えると
彼女のキャリーバッグを手にして
駐車場に停めたクルマへ向かった
黙ったまま歩きながら思った
今からまたもや始まるのだと
氷のような冷たい日々が…
もう何も言わない
言いたくもない…
吹けよ風 呼べよ嵐…
カミさんがパリ旅行に出かけて9日目
今日が最終日か…
カミさんのいない
明日の夜にはカミさんが帰って来ちゃう…
というか
僕が空港まで
迎えに行かなければならないんだけど…
なぜ飛行機を使うのかはわからない
どうして新幹線じゃないんだろう?
新幹線なら駅まで迎えに行くだけで済むのに
空港は何かとメンドくて…
まぁ…そんなのはいいか?
カミさんの都合だろうし
僕の知ったこっちゃない
昨日発生した左脚のふくらはぎの肉離れ
シップを貼ってサポーターで締め付けてるからか
今日は格段に良くなったような気がする
でもそんな気がするだけで
ふくらはぎに負担がかかるような
スロージョグの真似事やストレッチをすると
途端に痛みで顔を歪めることに…
こんな状況で
2週間後に迫ったマラソン大会
走れるのだろうか?
(いくらなんでも2週間じゃムリか…?)
結局
今日は何もできず
肉離れの処置や対策をネットで検索しながら
朝から飲み始めてしまって…
(もちろん飲むのはダメに決まってるが…)
(しばらくはせめてガマンしないと…)
(まぁ…そんなのどうでもいいか?)
(どうせ大したことのないジジイのマラソン人生…)
なかなか眠れなかったのは
カミさん不在の天国状況が
もう終わろうとしているからか ?
浅い眠りの中で
たくさんの夢を見た
そしてその度に目を覚ました
いろんな夢
他愛ない夢
遠い日の夢
忘れた筈の…
そして寝付けなかった
今日はゆっくり眠れるだろうか?
一杯ひっかけて眠ろうか?
最後の夜…
カミさんのいない…
でも
明日からどうしよう…?
しばらくは走れない
顔を付き合わせるしか…
カミさんがパリ旅行に出かけて8日目
(もう1週間も過ぎ…あっという間の!)
そろそろ
精神的にも家事的?にも
カミさんの帰宅に準備をしておかないと…
(エネルギーが要るというか…)
(ストレスが大きすぎてなぁ〜)
その前に
とりあえずは
今日も連続でジョギングを…
時間に左右されないで
好きな時に走れるのは
カミさんがいなければこそ…
カミさんのいない時で
天気が良いのはこれで最後かもしれないし…
運が良ければ
咲き始めた桜並木の下も走れそうだし
花見ランもまたオツなもの…
そう思って
昨日に引き続き17キロコースに向かったが…
やっぱり
出だしは足首や膝に違和感
走り方もぎこちないまま…
それでも
2キロ地点あたりから汗をかきはじめ
昨日のように全身も温まってきたのか
足首や膝の痛みも徐々に薄れてきて…
3キロ地点あたりまで来ると
段々と脚が軽くなってきて…
一つ目の上り坂は
自分でも意外なほど
スピードを落とさずに上りきれた
このまま行けば
今日の17キロはキロ6分半を切れるんじゃないか?
いや…
うまく行けば
まさかの6分切りも…
そう思って
6キロ地点の交差点に差し掛かった頃
僕の少し前を走る
同じグリーンのTシャツのランナーに
追いつきそうになっていた
ちょうど
これから二つ目の上り坂に差し掛かる手前
ペースを変えずに少しずつ近づくと
更にスピードを上げて彼を追い抜いた
そして
上り始めた坂道で調子に乗って
もっと引き離そうと企んだ
そのときだった…
ピキン!と…
左脚のふくらはぎ
何かが切れたような感覚
あ?
直後に
不意の激痛でバランスを崩しそうに…
イテててっ!
思わず大声をあげ
その場で立ち止まった
えっ?
まさか!
肉離れか?
再び走り始めようとした時
同じ激痛が…
あぁ…
やっちまった〜!
やっぱ肉離れだ!
顔を歪めて立ち止まった僕の横を
グリーンのTシャツランナーは
目をくれることもなく追い越していった
せっかくの治りかけに
ジジイが年甲斐もなく
頑張りすぎるからだよ
ゆるランでいいものを
ざまあみやがれ!
ふくらはぎをさすりながら見上げた
彼のグリーンのTシャツの背中に
そんなセリフが書いてあるように見えた
マラソン大会本番の2週間前に起きた
予想外の左脚のふくらはぎの肉離れ!
3月の大会に引き続き
同じようなミスの繰り返し…
どうして
もっと慎重に走らなかったのだろう
やっと
足首や膝が治ろうとしていた大事な時に…
いい気になって
バカジジイだろ…
復路の6キロ
泣きながら家までビッコを引いて歩いた
汗をかいた身体に吹く風は一層冷たく…
1時間以上もかかって…
神様…
日頃の行いが悪いのか?
バチ当たりの愚か者か?
独りよがりの…
カミさんがパリ旅行に出かけて7日目
パリのほかにどこを訪れているのか
詳細はまったく知らない
知ったところで…
そんなことより
刻々と迫る日
天国から地獄へ堕ちてしまう…
時間よ止まれ…
(止まってくれぇ〜)
朝起きて
今度は酔っ払う前に走ろうと…
前夜に雨がチラついたものの
窓の外は明るい青空と陽射し
ただ
やっぱり風が強そうで…
でも
手で足首を回してみると
調子はマシそうだったから
少しくらいの風でも走らないと…
(大会までほぼ2週間しかないし…)
走り出しはいつもとそんなに変わらず
足首や膝に違和感が残っていたが…
アップ気味にゆっくり走り続けた
3キロ地点を過ぎたあたりから
足首も膝も温まってきたのか
前日とは打って変わるほど調子が良く…
(痛み止めもしっかり飲んできたし…)
いつもの17キロコース
最後までペースもそんなに落ちず
痛みも大きくならないまま
何とか走りきることができた
走ってる最中は
まだまだスローペースだと思っていたが
走り終えて記録を覗くと
驚くことに平均でキロ7分を切って…
(ヤッタァ〜!)
キロ7分切りくらいで喜んでちゃ
チャラ息子に笑われそうだし
自分でも情けない感じもするが…
走ることすら難しかった時に比べると
信じられないような復活の兆しだと…
(やっとか?)
完治まではまだ遠いだろうけど
それなりに走れることの喜び…
2週間後のマラソン大会
少しはマトモに走れそうな気がする
サブフォーはまだ無理に違いないが
何とかして4時間台でのゴールを…
それでも
喜んでばかりいないで
充分注意しとかないと…
再び…
たとえ
いつかは走れなくなるとしても…
そんな日が来るとしても…