2012.3.30 外国税額控除
わが国では、国内外で稼いだ所得がすべて課税対象となる全世界所得課税の制度を採用しているため、内国法人が外国で得た所得に対して外国で課税されると国際二重課税の問題が生じます。今回は、この二重課税を排除・軽減する制度として、外国税額控除制度を簡単に解説します。外国税額控除制度は、次の(1)から(5)に大別されます。
(1)直接外国税額控除
内国法人の海外支店が外国に直接納付した外国税額を日本の法人税から控除する制度。控除対象外国法人税の額が当期の控除限度額を超える場合は、その超える部分の金額を繰り越して、翌期以降3年内に生じた控除対象外国法人税の額に加算することができます。また、控除対象外国法人税の額が当期の控除限度額に満たない場合は、その満たない部分の金額を繰り越して、翌期以降3年内に生じた控除限度額に加算することができます。
(計算式)
①全世界所得に対する法人税額×(国外所得÷全世界所得)※=法人税の控除限度額
※(国外所得金額÷全世界所得)の割合は90%が限度となります。
②法人税の控除限度額×法人割税率=法人住民税の控除限度額
③当期の控除限度額=①+②
(2)間接外国税額控除(平成21年の税制改正で廃止)
外国の子会社が納付した外国税額のうち、内国法人が外国の子会社から受ける配当に対応する部分を控除する制度。個人には認められていません。間接外国税額控除は平成21年の税制改正で、3年間の経過措置を経て廃止されました。
控除対象となる外国法人税額は、次の金額となります。
(計算式)
外国子会社の外国法人税の額×{外国子会社から受けた配当÷(外国子会社の所得の金額-外国子会社の外国法人税の額)}
(3)外国子会社配当益金不算入制度(平成21年税制改正で新設 No25参照)
平成21年4月1日以後に開始する事業年度からは、間接外国税額控除に代えて外国子会社配当益金不算入制度が適用され、外国の子会社からの配当の95%が免税とされて、二重課税を排除しています。
(4)みなし外国税額控除(タックス・スペアリング・クレジット)
開発途上国等においては、自国の経済発展の為に外国企業誘致の手段として租税の減免措置をとっているケースがあります。この場合、租税条約の規定により、その減免措置がなかったとしたならば納付したであろう租税を外国法人税額とみなして外国税額控除を行う制度。わが国が租税条約で「みなし外国税額控除」を認めている国は、2011年8月1日現在、ザンビア、スリランカ、タイ、中華人民共和国、バングラディシュ、フィリピン、ブラジルの7カ国で、みなし外国税額控除は年々廃止される傾向にあります。
(5)タックス・ヘイブン税制における特定外国子会社等に係る外国税額控除
タックス・ヘイブン税制の適用によって内国法人が特定外国子会社等の課税対象金額を合算する場合において、その特定外国子会社等の所得に対して課される外国法人税があるときは、その特定外国法人税額のうち課税対象金額に対応する金額は、内国法人が納付する控除対象外国法人税額とみなして、外国税額控除を適用することができます。
税額控除の対象となる外国法人税は、他の外国税額控除を行う場合の外国法人税の範囲と同様です。
(完)