TAKE-LOG 竹ログ

TCC・竹島クラフトセンター。35年振りの富士登山 その5

「お爺ちゃん頭が痛い」

8合目小屋に1時間以上も早く戻って来た孫は頭痛を訴えた。

「頭がガンガン痛くなってきた」

と言う。

頭痛は高山病だと分かっていたが、孫はたまらなく痛いと言う。

「酸素ボンベを吸えば治ると思うから買って良い?」

孫は小屋の売店から酸素ボンベを買って吸っている。



しばらくして、もう治ったかと聞くと、まだ治らないという。

「高山病は下れば治るから」

と、言っても

「痛くて歩けそうもない」

と言う。

標高3250mでも直射日光は焼けるほど暑い、
熱射病も考えて、孫を安心させるために、ここ8合目小屋の別棟には
大学医学部の診療所があるというと孫は診療を自分で申し込んだ。

診療の結果は高山病であった。

「下れば治りますから」

診療はお金は要らないそうだが、困った状態を診て貰って助かったので
診療所協力金を1000円を置いてきた。

私と別れて初めての単独登山で不安であったのだろう。
だから、走るように登り、初登頂の喜びどころか、頂上の景色を楽しむ余裕もなく、
頂上でみやげ物を買いながら高度を慣らすこともなく、
私の待つ8合小屋めがけて走り下りたのである。

不安と戦いながら一人で登頂して、私のところへ急ぎ戻った孫の気持ちが
良く解り、嬉しく思った。

酸素の薄い中を3250mから3700mまで一気に登り、そして一気に下ることは
孫の身体に短時間に異常な気圧差を生じさせたのである。

頂上で飲んだペットボトルがペチャンコになっているのを見せて

「これだけの気圧の差が脳に頭痛になって現れているんだ」

と説明してゆっくり下るよう促して歩き始めた。



まだ、宝永火口が下の方に見える、長い下りが待っている。

7合小屋まで下ったがまだ頭痛を訴える。

「お爺ちゃん痛いよう、頭が割れそうだ、なんとかして」

「我慢だ。下って酸素が増えれば治るから、がんばれ!」

午後になって登山者が多い、団体登山者をやり過ごしながら下る。


(高山病の頭痛と戦う孫)


昨夜の寝不足の疲労も重なって頭痛になっているのだろう。
時々孫を休ませながら時間をかけて下ることにした。

昼を過ぎて上空に刷毛雲が現れて天気は下り坂であるが
夕方までは持つだろうと判断した。

新7合小屋2780mまで下り、ゆっくり休む事にした。
ここでも北アルプスや八ヶ岳では山頂の高さである。

「子供が頭痛で‥、休ませてください」

と小屋でジュースを買って休憩をした。

「それなら下の町に下った頃には治っているから」

と小屋の主人と孫が話している。

「昨夜は布団一枚に二人で眠れなくって参ったよ」

「ここなら平日なら布団に1人で寝られるから」

と小屋の主人が言ってくれた。

私は、来年は孫が父親のジョーを富士登山に案内する時のために
小屋の主人に名刺を渡しておいた。

6合小屋を過ぎると下の方に新5合バスターミナルの駐車場が見えて来た。
もう少しであるが、もう少しが辛い。

ダラダラ下りが膝にくる。

いつものことだがもう少しだと思うと足も膝も腰も背中も
痛くなるのは何故なのだろうか。

4時を過ぎると霧に包まれて雨が降って来た。

[水が塚]マイカー駐車場に着くと横殴りの雨であった。

車にもどり、ひと休みするうちに孫は疲れから寝入ってしまった。

私の14回目の富士登山は登頂出来なかったが、代わりに孫が登った。
世代のバトンタッチができたことが、私にとって登頂以上に満足な気持ちであった。

夕闇も迫る登山道路を20m先しか見えない濃霧の中を慎重に車を走らせて
富士宮の町へ下ると 寝ていた孫が目覚めて言った。

「あれ!うそみたい、頭が痛いのが治ってるよ~」

終わり。

蒲郡市の観光の中心地竹島海岸竣成苑内にある竹島クラフトセンターの主人が投稿するブログです。

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