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法律考第十九回 無効と取り消し その1

2007-11-24 12:56:13 | 憲法考

無効と取り消し

無効と取り消しは如何違うのか

 法律行為が無効なものであれば、初めから何の効力も発生し無い。原則として、無効な行為追認と言う概念は無い初めから無効であることが分かっている場合追認すると新たに法律行為をしたものと看做されるだけである(民法第109項)。これに対して取り消しの場合には、取り消されるまで有効な法律行為とされる。取り消されて初めて、最初に辿って無効となるのだ。また、無効の主張誰からでも出来るのだか、取り消しの場合取り消せる者は決まっている

 取り消しは取り消しや追認がされるまで法律関係は安定しないというのが、一般の考えるところであろう。しかし、取り消しのほうが無効の場合よりも安定していると言う異見もある。つまり、取り消しの場合には消滅時効があり、時効が来たら取り消せなくなるにも拘らず、無効の場合は無効の主張がされない以上、何時までも宙ぶらりんで、何時までも当事者や関係人が無効かどうかも分かってい無い場合があるからだ。もし、無効を分らず、無効な売買で手に入れた不動産を転売して仕舞ったなどということがあり、無効に気付かずに取引の安定を乱す事例は多いのだ。更に取り消しには特別法などで消滅時効を短縮している場合もあり、株式会社の決議の取り消しの時効期間を会社法第831条1項 では「株主等は、招集の手続又は決議の方法が、定款・法令違反などがあった場合、決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる」としている。更に、一定の行為があれば取り消すことが出来なくなる(民法第125条各号)などがあり、取引の安定をはかる手法が取り込まれている。

無効・取り消しの根源

 とてもじゃないが社会規範や道理からして、この契約は認められないというようなものは無効の対象とし、世知辛く厳しい社会から善良な人々を守ることを目的として、その人達に自分を守らせるために契約が無かったことにすることが出来るような仕組みが取り消しの規定であると私は考える。

無  効

 法律行為の効力を初めから生じないとすることが無効の意味です。無効には民法第95条や第96条の場合のように絶対的効力を持たせる場合や、無権代理のような対応をとるものもある。此処では、普通の意味で無効といわれるものに限定して話を進める。

法律行為の一部無効

 契約中に、その一部について無効にしなければなら無いものもある。この一部を無効とすれば、契約全体が意味を無くすことになれば、契約全体も無効となる。

無効はどのように主張されるのか

 無効の主張が通れば権利義務の関係は無くなるので、履行前であれば、その当事者は履行の必要は無くなり、履行済みの者は返還請求が出来、或いは相手方などは返還義務等が生じます。ところが、無効の請求の抗弁の提出や返還請求権は一定の場合には制限を受けることがあります。

 ところで、虚偽表示の無効の場合には第三者に返還を請求することはできません(民法第94項)。売買契約の無効の場合においても相手方の取得時効が完成してしまえばその目的物の返還を請求できなくなります。

無効行為の転換

 本来、無効である法律行為を別な法理を使って有効とするものである。

 例えば、地上権として土地を貸したのだが、法定の地上権の成立要件を満たしていなかったために、この契約が無効となったので、この契約を賃貸借としては有効であると考えて行くものなどを無効行為の転換と言う。

 例として幾つかを挙げる。①法律行為の有効要件として幾つかの一定の方式を要求される場合がありますこれ等の方式が欠けている場合には、法律行為が無効となってしまうので、これを法律の規定で救済しているものがあります。

(方式に欠ける秘密証書遺言の効力)
民法第971条 秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあっても、第968条に定める方式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有する。

②非嫡出子を嫡子出子として届けた場合には、認知としての効力を持つ(大判大正15年10月11日民集5巻703頁)。

③妾腹に産ませた子を一度他人の嫡出子し、その後、その他人の代諾により、その実父と養子縁組した場合は、認知の効力を認めるべきではない(大判昭和4年7月4日民集8巻686頁)。

④他人の子を行き成り夫婦の嫡出子として育てた子を養子としては認めない(最裁昭和25年12月28日民集4巻701頁)。

 学説は、③、④を認めるように傾いている。

無効行為の追認

①追認とは、効力の生じてい無い行為についてそれを有効にする意思表示のことを言う。原則として無効な行為は追認しても有効になりません。(例)公序良俗の行為など。(無効な行為の追認)第119条 無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。・・・・無効である原因を除去すれば、新しい法律行為をしたと看做されるのだ。

○虚偽表示による無効な行為

 無効な行為の原因である内心の虚偽を除去して、表示どおりの意思を以って、改めて意思表示(追認)すると、その時点より有効な意思表示をしたことになる。

○追認による遡及効を認めても良いと言う立場(通説)「他人の権利行為と追認

 他人のものを売ることは出来る(民法第560条)が、それを本人に黙って売り渡すことは出来ず、無効である。しかし、後で本人がその処分行為を追認すれば、初めに辿ってその処分行為を有効と看做す(大判昭和10年9月10日民集14巻1717頁)。この判決は余りにも強行規定の条文を無視したものでは無いか?その理由を皆さんで考えて貰いたい。

○通説として、上の場合のような事例のように追認を遡及させることで『第三者の権利を害せ無い』としている。このような場合にも、無権代理人の行為の追認の場合と同様な考えをしようと言うことである。つまり、このような場合にも、対抗要件の問題として無権代理の場合と同じにように考えれば良いと言うのだ。つまり、他人の土地を売り渡した(引渡しまで完了したが、未だ、登記は未了)後に、その他人がその売り渡した土地を更に売り渡した後に最初の売り渡し行為を追認した場合には、売渡を受けた両人は登記の先後による対抗関係となるということなのだ。この場合の追認でも、他人の為した売買が有効に生る訳では無く、新たな売買を認めるということである。

 此処での説明は、やや難解なものが多かったと思うが、じっくり考えれば分ることと理解する。無効の問題は民事法の上では、多くの事例に関係し、最も重要な問題を提起するするので、じっくり取り組んで貰いたい。


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