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天道の真髄は如何に?

法律考第二十二回 条 件

2007-11-26 13:31:41 | 憲法考

                  条 件

○条件とは? 「将来確実に起きるとは限ら無いことと法律行為の効果の発生や消滅をからませて相手と何らかの約束をすること」とでも言っておこう。前項で説明したように、条件の決め方には二つの方法がある。条件によって成否が問われる事象は、必ず将来のもので無ければなりません。また、その法律行為が行われた時点では、将来確実に起きるかどうかも未確定で無ければならないのです。

○条件に似て非なるものは? 確定している事項なのに当事者が知らないだけの過去または現在の事項を条件としてしまったと言うこともあろう。この条件とみなされたものは無論、条件とはならない。これを確定条件と言う。また、何時起きるかは分から無いが、必ず実現することが分かっていることは条件とはなら無い。これを条件にした場合は不確定期限をつけたと言うことになる。

条件と期限を分ける基準はどこにあるのか? 例えば、将来、事業に成功したら貸した金を返せと言う契約で、もし失敗したら金を返すに及ばずと考えてのことならそのときには贈与すると言う意味が含まれ、停止条件付法律行為とみなされ、そうではなく、失敗したことが確定しても、金を返すべきだとの考えの下に約束をしたならば、いずれにしても将来返さなければならい約束事となるので、とにかく返さなければならない時期は必ず来ると考えられ、不確定期限付き法律行為と看做される。

いろいろな条件

停止時用件・解除条件 

条件が成就した場合の効果
民法第127条 停止条件付法律行為は、
停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
2 解除条件付法律行為は、
解除条件が成就した時からその効力を失う。
3 当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。

 停止条件とは、「合格したら学費を援助しよう」など、そのことが叶ったら当事者同士に法律効果が生じるような約束事のことを言い、解除条件とは、「落第したら学費の援助をやめる」など、そのことが生じたら当事者同士に継続していた法律関係が消滅するような約束事をすることである。条件が確定した場合であっても、原則として約束した時点に辿って効力が生じるなどということは条件の性格からして無いのだが、約束の内容や仕方によっては約束をした時点まで辿って効力を生じさせることが出来るとしている。

各種条件

随意条件 停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効となる(民法第134条)。

偶成条件 当事者の努力や能力とは関係が無い事項、例えば、「雨が降ったら」というような自然現象や、あるいは「当事者以外の第三者である人が合格したら」というような第三者の行為のごときものを条件とするものである。条件として無効となる。

不能条件 どう考えても実現しそうの無いことを条件に付した法律行為は認められ無い。不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。不能の解除条件を付した法律行為は、無条件とする(民法第134条)。

混合条件 「私が彼女と結婚すれば」とと言うように上の2条件を混合した条件である。条件として有効となる。

仮装条件と看做されるもの

仮装条件とは? 一応条件とは成り得る概観はあるのだが、実質的条件とは成り得無いものを言う。

既成条件 説明するまでも無い。停止条件とした場合は無効であり、解除条件の場合は無条件となる(第131条参照)。読者は各々考えて貰いたい。

不法条件 不法な行為の実行やそれを助長するような条件を言う。不法な条件を付した法律行為は、無効とする。不法な行為をしないことを条件とするものも、同様とする。
 なお、ここで問題となるのは、学説や判例の立場として、一見、不法行為を助長するような内容とするものであっても、法律全体から観て妥当なものだと判断出来れば、公序良俗に反し無い条件をつけた契約であると看做されることもあるということである(第132条参照)。

 人を殺さ無いということを条件につける法律行為は、不法な行為を暗に認めたうえであるかのような条件となり、無効であるとするのだが、嘗て、法律行為の当事者である本人が相手方の名誉を傷付けたことがあり、この次に本人が相手方の名誉を傷付けた場合には10万円払うという約束をさせられた場合には、法律行為全体を見れば、相手方が以前に受けた損害の賠償を猶予する意味合いもあり、また、違法な行為を助長するものとは認められず、有効な約束事と認められるとしている。

 しかし、不法な行為を助長するかそれを止めさす効果があるかを腑分ける以上のような見解は、余りに判然性が乏しいものと言わざるを得無い。

条件に馴染まない法律行為

 原則として「条件」は総ての法律行為につけることが出来る。

 しかし、例外もあるのだ。

例外① 公益上許され無い場合⇒条件をつけたがゆえに不確定なものにしてしまう恐れがある。(例)婚姻や養子縁組や手形(転々流転するので条件をつけることを許せば取引の安全を害す)など。

例外② 相手方の法律上の地位を不安定にする場合⇒解除、相殺、取り消し、解除など総ての単独行為をする者の恣意的判断で条件の成否が決まってしまう。例として、当事者の一方が結婚すれば取り消すと言うもののような条件をつければ、相手方は何時取り消されるか分からず、法律的に非常に不安定な状態に置かれてしまう。しかし、強ち不安定な状態にしてしまうと言うことで無ければ、条件を付けることが出来るとされている。例えば、一週間以内に払わなければ改めて解除の意思表示をし無くとも契約を破棄すると言うような条件を付けることは、格別それによって相手を不利な状況に追い込むことは無いのだとされている。

相殺とは、相手に対して同種の債権をもっている場合に、双方の債務を対当額だけ消滅させることをいう(民法第505条以下に規定がある)。

◎条件付権利

 前述の通り、結婚してくれれば条件を飲むと言うような条件であれば、公益上許され無い条件を付けたと言うことになるが、結婚すればこれをあげると言うようなものであれば、これを貰えると言うこともひとつの利益となり、利益に対する期待権を法は守る立場なので、この場合には条件付権利として認められる。したがって、このような条件を附された権利条件付権利と言う)を侵害する行為は許され無い(第128条参照)とされるのだ。

 条件付権利を侵害するような行為自体は許され無いが、例えば、そういった約束をしておいてその約束を破れば債務不履行の責任を取らなければならないのは当然であり、期待したことの履行に変わって相手方から損害賠償を請求されることになるのだ。結婚の後には土地をあげると言った条件付法律行為をした後に、その土地を他人に譲ってしまったときには、約束を果たすためにその土地を取り戻すことが出来るものか?その土地を譲り受けた第三者者が善意であれば、その人にとっては何の責めを負わされるべきことではない。この場合は約束の権利を期待した相手方とその第三者とどちらが先にその土地の登記をしたかと言う対抗要件の在る無しで決着を付けることになるのだ。

 条件付権利は譲渡することも出来るし、担保に供することも出来、また、この権利を原因として仮登記もすることが出来るのです(民法第129条、不動産登記法第条)。

 この仮登記を当初からすることによって当てた方は期待権が守られることになる。また、担保に供することも出来ると言うことは、条件付義務に保証人を立てたり、抵当権を設定したり出来ると言うことである。

条件への期待権を侵害する行為

条件の成就の妨害
民法第130条 条件が成就することによって
不利益を受ける当事者故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。

この要件は、①不利益を受ける当事者が、②故意(条件が成就し無いことかの認識があれば良いのであって、害意まで必要無いとする)に、③成就を妨げたとき(妨害と不成就の間に因果関係があること)、④条件を侵害したことが信義則に反することが必要となる。

 民法では「故意にその条件の成就を妨げたとき」と定められているが、「故意にその条件の成就を促進したとき」も当然同様です。保険契約の規定(商法第641条、第665条)を参照。 


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