行為能力
行為能力とは民法上、有効な法律行為を単独でなしうる能力のことを言う。権利能力と粗同義である。
1. 未成年者
日本では満二十歳を以って成人とされる(民法第4条)。ただし、未成年者が婚姻をした場合は、20歳に満たない場合でも成年に達したものと看做され(第753条 )、これを成年擬制と言う。婚姻が解消されれば、元の未成年に戻る。
法律行為とは一定の効果の発生を求めて行う行為で、法律がその効果の発生を認めるもの。一定の法律上の効果の発生を望み、その意思を外部に表示する行為である意思表示を不可欠とし、その方向・数により、遺言などの単独行為、契約(双方行為)、法人の設立などの合同行為に分類される。
未成年者の法定代理人は、普通は親である(親権者)が、親権者と利益が相反する行為については家庭裁判所に特別代理人の選任を請求しなければならない(第826条)。<wbr></wbr>親権者になり得る者がいない場合は、未成年後見人が選任される(第839条、第840条)。 法定代理人は未成年者の法律行為への同意権、代理権、取消権、追認権を持つ 。
未成年者が一定の法律的効果を得ようと意思表示をする場合には、未成年者の法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない(民法第5条1項)とされている。単に権利を得、又は義務を免れる法律行為とは、負担のない贈与の受領 や預かっていたものを返すことなどを言う。弁済の受領は債権を消滅させるものなので同意が必要である。
意思能力とは、自分の行為の性質や結果を判断することの出来る精神的能力。幼児・精神病者・泥酔者などは意思能力が無いものとされ、その者のなした法律行為は無効であり、不法行為の責任も負わ無い。
しかし、未成年者だからと言っても、年齢によって夫々の事理毎に意思能力は異なるのであり、普通、意思能力は7から10歳位には認められる。よって、未成年者だからっと言って、法定代理人の同意無い法律行為をしたとしても、すべて無効になるのでは無く、その法律行為の種類と未成年者の年齢によっては取り消し得べきものとなる(民法第5条2項)となるのだ。
以上に関らずあらかじめ法定代理人の許可がある次の行為なついては、未成年者は単独に法律行為をすることが出来るのだ。
①法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、未成年者は一々同意を得無くとも良い(民法第5条3項)。学習塾に入る為の入学金を払ったり、お小遣いを貰って使うことなどにはいちいち同意はいら無いのだ。
②種類を決められて代理人にすることを許された一つまたは数種の営業を未成年者は成年者と同様に行うことが出来る(民法第6条1項)。
また、認知能力(民法第780条)や遺言能力(民法第961条)など身分に関する行為は、法定代理人の事前の許可など無くとも、未成年者は単独で行えるのだ。
2. 成年後見制度
(1)成年被後見人制度
成年被後見人とは精神に障害があり常時物事の判断がまるで付か無い人には、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、検察官の請求により家庭裁判所は後見開始の審判をすることが出来る(民法第7条)。後見開始の審判を受けた人は、成年被後見人とされ、成年後見人を付されることになる(民法第8条)。
成年被後見人であっても、電車の切符を買ったりする日常行為や婚姻(民法第738条)・離婚(民法764.738条)等の身分行為は単独で出来るが、其の外の法律行為は取り消すことが出来、成年後見人がその生活、療養看護、財産管理(民法第858条)をすることになる(民法第9条)。 ただし、成年後見人が成年被後見人の面倒を見るときは成年被後見人の意思の尊重及び身上の配慮に留意しなければなら無い(民法第858条)。原則として、総て成年後見人が代理して法律行為を行う。
成年被後見人の精神の障害が無くなった場合には、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求により、家庭裁判所は後見開始の審判を取り消さなければならない(民法10条)。
(2)被保佐人に関する制度
精神上の障害により物事の善し悪しを判断する能力が常時まるで付か無いまでには至ら無いが、著しく不十分な人には、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる(民法第11条)。
保佐開始の審判を受けた人は、被保佐人とされ、保佐人を付されることになる(民法第12条)。被保佐人は日常の行為は勿論、原則的には単独で行為できるのだが、次の一定の行為については保佐人の同意無しに為されれば、取り消し得られるべきものとなる(民法第13条1項)。
①元本の領収、利用 、借財または保証をなすこと 、②不動産または重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為 、③訴訟 、④贈与、⑤和解、仲裁契約 、⑥相続の承認、放棄、遺産の分割 、⑦贈与・遺贈の拒絶、負担付の贈与遺贈の受諾 、⑧新築、改築、増築の修繕 、⑨民法602条に定める期間を超える賃貸借
保佐開始の審判を請求を出来る者や保佐人若しくは保佐監督人の請求によって、民法第13条1項の各号に定めるもの以外にも被保佐人が保佐人の同意を得なければ取り消され得られる法律行為を追加する審判を家庭裁判所に請求することが出来る(民法第13条2項)。
もしも、被保佐人自身には何ら損失を及ぼすことが無いにも拘らず、保佐人が被保佐人に同意を与えない場合には、被保佐人は家庭裁判所に同意の代わりの許可を与えるように請求できる(民法第13条3項)。
同意を必要とされた行為を同意又は許可無しに被保佐人がした場合には、その行為は取り消され得べきものとなる(民法第13条4項)。
次回は「被補助人に関する制度」を一緒に勉強しましょう。なお、この記事に誤った記述があれば訂正のコメントを戴きたい。
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