吐露と旅する

きっと明日はいい天気♪

妙なのはどっち

2019-09-05 23:15:17 | インポート
うちのお向かいに住んでいる独り暮らしの男性は
一度も働いたことがなく、お酒とタバコとテレビと共に生活をしています。

そんな彼が、数年前から妙な行動をするようになりました。

それは。

エアー携帯。

近所なので、当然外で姿を見かけることもあるわけですが
例えば、通りの向こう側から彼が歩いてくるときに
まるで誰かと携帯で話している風で
「あー、はいはい」
「そうですね、はい、分かりました」
「ええ、ええ、はいはい」
などと、喋りながら近づいてくるわけですが
至近距離まで近付いて、びっくり。

耳に当てた手の中は、空っぽ。
携帯なんか持ってないし、イヤホンマイクでもない。

そして、注意してお喋りを聞いてみると
彼が喋る言葉の合間あいまに、相手が話すだけの余裕もないのです。
一方的に、ひたすら相槌を打っているような感じと言えば分かりやすいでしょうか。

それを、夏の気温の高い日などは、自宅のベランダに立ち、何時間もエアー携帯をし続けているのです。

初めのうちは、なんだか変だな。
ちょっと怖いな。
そんな風に思っていたのですが。

でも、彼にそんな行動をするということは、彼が何処かで見て聞いて、学習をしたということなのではないか。

私は、そんな風に思いはじめました。

今や、駅のホームでもバスの待ち時間でも、ほとんどの手には携帯が握られています。

誰かとお喋りをしたり、取引先と連絡を取り合ったり、友だちとラインでやり取りしたり。

つまり、彼は。

彼が見ている、「普通」を真似しているのではないだろうか。

そんな風に考えたら、じゃあ妙なのは一体誰なんだろう?

開いた窓の隙間から聞こえてくる、彼のエアー携帯のお喋りを聞きながら、私は少しの間、考えてしまいました。