よみがえるケインズ

ケインズの一般理論を基に日本の現代資本主義を読み解いています。
カテゴリーが多岐に渡りすぎて整理を検討中。

番外編:誰か金を借りてくれ

2023年04月24日 | 先進国の経済学
 以下のグラフは国民経済計算の「2.民間・公的別の資産・負債残高」から筆者が作成したものである。民間部門(家計+企業)の資産を元に現預金と貸出を抜き出した。
 


 現預金と貸出がきれいに対応するわけではないが、注目すべきは1998年までは貸出が現預金を上回っていたことである。そんなことができるのか、と思われるかもしれないが、銀行全体には信用創造という機能がある。現金で決済してもその多くは預金として戻ってくる。そもそも口座間決済なら現金は銀行全体からは出て行かない。同じ現金を複数の人に貸すことができるのだ。バブル発生の原因ともなる。

 次のグラフは現預金マイナス貸出を示している。いわば資金の余剰だ。
 


 日銀の資金循環統計では金融機関の純債務は400兆円超といったところだから、500兆円ほどが手元流動性ということになる。ならないかもしれないが・・・。

 仮にこれ(貸出÷現預金)を、言葉の通常の定義とは違うが、預貸率と名付けると1998年までは預貸率が1を超えていたということになる。諸賢にはお分かりだと思うがバブルの名残である。

 法人企業統計の金融機関借入を追うと次のようになる。
 


 1998年から2007年にかけて200兆円弱の債務が清算されている。年間20兆円が引き上げられ今に至る長期停滞の基礎を作った。2021年になっても最高額には追い付いていない。げに恐ろしきはバブルの発生とその崩壊である。
 日本経済は、未だに、バブルの後遺症に苦しんでいる。それはバブル崩壊後の金融財政政策に原因がある。借りた金を清算することが経済の目的となってしまったのである。当時は企業だった。今は政府がそれを追求している。

 債務は清算すればいいものだろうか?
 債務はなければない方がいいものだろうか?

 借金が悪なら貯蓄も悪ということになる。借りてくれる人がいない貯蓄は何も、全く何も産み出さないからだ。財務省も、会社の経理(それもメインバンクから派遣されたような)もこれが分かっていない。

 政府を含めた日本全体が貯蓄を始めれば、それを誰が借りてくれるのか。企業が資金を吸収する主体に、もう一度なるために何が必要とされているのだろうか?

 もちろん答えは需要である。


預貸率の正確な定義は?野村證券に聞いてみた。


 

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