よみがえるケインズ

ケインズの一般理論を基に日本の現代資本主義を読み解いています。
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政府の財政を考える ⑥    再分配!好! 再分配は良い事だ

2023年10月16日 | 先進国の経済学
*≪中央政府(いわゆる政府)+地方政府(地方自治体)+社会保障基金≫を連結したものを「一般政府」と呼ぶ。以下「政府」と呼称する。

現物社会移転とは?

 現物社会移転とは、一般政府が家計に現物の形で支給することを目的に、市場生産者から購入する財貨・サービスを指す。具体的には、医療費、介護費のうち保険給付分、公費負担医療給付、義務教育に係る政府による支出、家計向け公共サービスの公費負担分等が含まれる。公立美術館の入場料収入を除く経費も現物社会移転である。直接的に財やサービスを購入するのは政府だが、その使用(消費)は家計に属する。

 この現物社会移転も再分配の一種である。その規模、一国経済で果たす機能・効果について議論されないが、議論されないゆえに歳出削減の対象になりやすい。現物社会移転の最大の特徴は、全額消費に回るということである。費用を出すのは政府だが、消費するのは家計なので、これを家計消費に加えたものを家計の現実最終消費と呼ぶ。

 

 調整可処分所得とは、前回の可処分所得に現物社会移転を加えたものだ。消費されているから反対側に所得として計上される。現実最終消費とは家計消費に現物社会移転を加えたものだ。

 この現実最終消費が、家計に関わる一国全体の消費となる。現物社会移転後の消費性向は94.0%となり所得の再分配後の消費性向92.5%を超える。現物社会移転を所得と消費双方に加えたのだから当然だ。

 

 筆者は政府の再分配が日本経済を破局から救ってきたと考えている。しかし常に再分配構造は攻撃にさらされてきた。この間の高齢化による「意図せざる再分配構造の強化」はそのために、十分には進めることができなかった。これが実は長期にわたる停滞の唯一の原因である。

 次回、三部門間の資金のやり取りを含めて一国の再分配構造を論じる。

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