よみがえるケインズ

ケインズの一般理論を基に日本の現代資本主義を読み解いています。
カテゴリーが多岐に渡りすぎて整理を検討中。

2-02:投資の停滞が長期停滞を招いている GDPの内訳

2021年09月28日 | 日本経済分析
 GDP統計は一国の経済を家計・政府・企業の三部門に分け、その三部門の消費・投資それぞれを集計し足し合わせたものである。消費と投資に大別すると下記のようになるのは前回見たとおり。

消費   家計       民間最終消費支出
         政府       政府最終消費支出
                       
投資   企業       民間住宅
                      民間企業設備
                      民間在庫変動
                       
         政府       公的固定資本形成
                      公的在庫変動

総消費+総投資=総支出=GDP(ただし純輸出を除く内需) となる。
*ブラウザによってはインデントが微妙に合ってないかもしれない。

GDPを総消費と総投資に分けると

 1997年を100としてそれぞれの時系列での変化をグラフにした。総支出というのは要するに総需要のことである。


 
 総投資は1997年の80%程度の水準で推移している。

 総消費は漸増というところであろうか。ただしその多くは政府最終消費支出である。その漸増も総投資の伸び悩みが帳消しにしていて、総支出(=GDP)が停滞する原因となっている。

 投資なしには将来の収穫もないが、消費が漸増では積極的に国内投資を行う動機は企業部門には生まれない。この環境で企業部門が投資を行うとすれば輸出向けか省力化の投資しかない。もっと言えば賃金を抑えることによって利益を産み出すしかないのである。成長=企業の利益の増大と理解されているが、その文脈で賃金を上げようとすれば「成長なき時代を念頭においた政策モデルを考える責任」か「大幅賃上げ論:戦闘的労働運動の復活」とかいう議論になってしまう。問題は需要側にあるのだ。

 成長を産む投資は民間企業の設備投資だけだ、と考えている限り停滞は終わらない。総需要が変わらない中で企業には設備投資を行う動機がないからだ。非営利・公共部門の投資こそが長期停滞を抜け出す鍵である、と筆者は考えているが、それはおいおい語っていくことになる。

各項目の増減(1997年第2四半期と2021年第2四半期の比較)

 1997年と2021年の同一期を比較した。数字の単位は兆円である。



 総消費は漸増だがその増加分の82.5%は政府最終消費支出となっている。ところが、この政府最終消費の増加分のほとんどはGDPに寄与していない。いわゆる「財源問題」のために国民負担が著しく増大しているためである。その詳細と「非営利・公共部門の投資こそが長期停滞を抜け出す鍵である」と言った場合の「財源」については次項以降で展開していく。

 簡単に言うと増大する政府支出の財源を増税に求めているため、さらにその増税の方法に問題があるため家計の可処分所得を圧迫しているからである。これは家計の項で詳述する。

 この項では、それをどう解釈するにせよ「投資の停滞が長期停滞を招いている」ということを共通の認識としたい。

 ところが、需要というと消費のことだ、と何となく考えている人が多いように見受けられる。
 
 需要=消費+投資 ということをしっかり頭に入れて欲しい。特に世の中のエコノミストとか経済学者と称している人々には。
 さらに投資には民間と社会的投資があることも。
 この場合の社会的投資はGDPの「公的固定資本形成」よりずっと広い概念である。


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