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「供給量と需要量を等しくする価格は均衡価格と呼ばれる。その価格で売買される数量は均衡数量だ。均衡価格は市場清算価格と呼ばれることもある。それは、この価格この価格で買いたい全ての買い手がこの価格で売りたい売り手を見つけ、逆もそうなるとことを保証し「市場を清算する」価格という意味だ。
P・クルーグマン/R・ウェルス「マクロ経済学」
商品の需給は価格によって一致するのか?
だいたい下図とともに次のように解説される。
量というのは生産数量。価格とあるのは1商品当たりの単価である。
図に需要・供給とあるのはある商品の価格によって需要と供給がどのように変化するかということを示している。曲線の形状はよく経済学の教科書に載っているものとした。
前提
- 消費者はその商品の価格が高いほど買わなくなる⇒右下がりとなる
- 供給者(生産者)はその商品の価格が高いほど生産に励む⇒右上がりとなる
価格P1の時は供給不足。価格P3の時は供給過剰。価格によって均衡価格P2が実現されるというのだ。
これをさらにA社とB社が同じ商品(*)を作ってP2で売っているとしよう。
A社はP2を下げられるが、B社は下げられない。A社が自社商品をP1に下げれば販売数量はP1と需要曲線の交点M1となるだろう。B社はP1に値下げをしないかぎりシェアを減らしていくことになる。
ではA社もB社も価格をP1に下げたらどうなるだろう。両者は価格低下による販売数量が増えた量(M1)を分け合うことになる。
問題は均衡価格理論が需要曲線の形状を説明しないことにある。均衡価格理論では需要量がいかほどかの説明がつかない。個々の商品の価格変化はそれぞれのシェアを変化させる要因であっても需要の総量を大きく変化させるものではない。ある商品の価格が半分になってもその商品が倍売れるとは限らないのである。冷蔵庫が半額になったら二台買うだろうか?パンが半額になったら二倍食べるだろうか?
需給の関係は短い期間では価格を動かすが、需要と供給のそれぞれの量は、別のところで決まっている。
図の需要と供給それぞれの曲線は、需要関数・供給関数などと呼ばれているがあくまで理論上のもので現実には何の意味も持たないのである。
では需要量はどのように決まっているのか?
販売総量から販売総額への転換
ここで需要量は販売数量ではなく商品単価×数量=売上額をもとに考えることになる。均衡価格理論は商品の個数という数量で考えるが取引は貨幣で行われる。売上額を考えるということは貨幣で考えるということだ。
ケインズはこれを貨幣価値と呼んでいる。
*複数社でも成り立つ。別の商品でも成り立つ。説明の簡便のためである。前掲の「マクロ経済学」はコーヒーと紅茶で説明している