中幌呂原野の知人の私有地にあまり広くない湧水地があり、細流を利用してワサビが栽培されている。
梅沢俊『新北海道の花』(北海道大学出版会)には、ワサビの自生地は胆振地方以南と記されているが、冬期間も凍結しない湧水があり条件がよければ、寒さの厳しい釧路地方でも栽培が可能である。
この細流のはずれにクレソンが生育していて、承諾を得て春から摘み取らせてもらっているが、もうこの時季では無理だろうといいながら、女房には何か感じるものがあったのだろう。北斗湿原展望台を過ぎ、道道をしばらく進んで左手の林道に入り目的地に着いてみると、なんとまぁ、十二月下旬とは思えないこのグリーン!
しかし、摘み取るのはほんの僅かで終了。この春、思いがけない別の場所で発見したワサビをめがけて慎重に歩を進める。
左側の水流とヤチボウズは凍っているが、右側のたっぷり水を含んだ泥土は表面だけが凍結している。バリッ、ズブズブ・・・75㌔の体重がかかった右足が、一瞬の間に45㌢の長靴の上端まで埋まった。
谷地眼(やちまなこ)だ。すかさず上体を低くし左手で枯れ草をつかみ、重心を左足に移したが、長靴はびくともしない。女房は少し前方で、目線はワサビ。やむなく左手で枯れ草、右手で左膝を抱える姿勢で、右脚を揺すってようやく脱出できた。
目当てのワサビはすぐ見つかった。栽培の形跡は全くないので、種が風で飛んだか、小鳥が運んだかして、自然に生育したものと思われる。三株のうちの一株から一本だけ採取した。来春、株分けをして太く育てよう、と女房が楽しみにしている。
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