初見の子狐は生後1か月くらいだった。狐は通常1回に3〜4匹の子を産むそうだが、この母狐は1匹しか連れていないので、出産後に2〜3頭が何らかの事故で命を失ったと思われる。
子狐は、8月4日の時点で母狐とほぼ同じ体格に生長しているが、まだ母狐に甘え、親密な親子関係が維持されている。しかし、8月下旬になると、母狐はある日突然、俗に「子別れの儀式」と呼ばれる拒絶反応を示す。生長した子狐を、保護すべき子ではなく対等の競争相手と認識する本能的な行動と言われている。これ以後子狐は、新たなテリトリーを自らの力で獲得するべく、厳しい試練を強いられるのである。