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今日の筆洗

2021年10月01日 | Weblog
 腕に覚えがあった少年は、あこがれの手塚治虫に作品を見てほしかった。雑誌「漫画少年」に投稿している。講評をしていた手塚先生に作品は取り上げられた。悪い見本として、「アイデアも絵のタッチも子どもらしくない」という論評付きだった▼少年はめげなかったという。<今は通用しなくとも…その暁には見ていろよと、情熱をふつふつとさせていた>。のちのさいとう・たかをさんは、自伝でそう振り返っている▼反骨心と自らの手法への確信があったようだ。漫画が主に子ども向けだった時代に、硬質なタッチと現実味あるストーリーで勝負する道を歩む。脚本、構成、作画のすべてを一人で手がけて、いい作品を生み続けるのは難しいと、常識外であった分業化にも乗り出す▼人の行く裏に道あり花の山。相場の世界に、たしかそんな言葉があったが、手塚治虫らがつくった巨大な道のかたわら、荒れた野に自分の行く先を見た人だろう。大人も読む劇画の世界を切り開いたさいとう・たかをさんが亡くなった。八十四歳▼少年時代の情熱に導かれて歩んだ象徴が「ゴルゴ13」に違いない。読み応えと、冷戦期から現代に及ぶ激動の世界の姿を大人の読者らに、届け続けた▼亡くなった後も連載は終わらず、ゴルゴの活躍は続くという。分業のおかげでもあろう。未開であった地に、情熱の花を多く残し劇画家が去った。