「ラプラスの悪魔」とはフランスの数学者ラプラスが提唱した一つの仮説である。一匹の悪魔がいる。この悪魔はすべての物質の動きや力学的状態を完全に把握し、解析できる能力を持っている。だとすれば、この悪魔は未来に何が起こるかを正確に予想できるだろう−▼正直、自信はないが、原因と結果の関係を説明しているのだろう。原因が正確に分かれば、結果、つまり何が起こるかは分かる▼悪魔という言い方には語弊もあるが、その方をやはり悪魔、人類を助ける優しい悪魔と呼びたくなる。プリンストン大学上席研究員の真鍋淑郎さん。現在は米国籍を取得しているが、日本人としては二十八人目となるノーベル賞(物理学賞は十二人目)の受賞が決まった▼二酸化炭素濃度が上昇すれば、地球温暖化に影響する。温室効果ガスと温暖化の関係は今では常識となった「原因と結果」だろう。それを世界に先駆けて明らかにし、このまま進めば、暗い未来が待ち受けることを予測したのが真鍋さんである▼その研究と予測を受け、人類は遅ればせながら温暖化対策の取り組みを急いでいる。真鍋さんの成果がなければ温暖化対策はさらに遅れ、あるいはもっと危険な進路を人類は進んでいたかもしれぬ▼悪魔と書きだしたが、例えるべきは温暖化の正体を暴き、警鐘を鳴らす科学の「予言者」であったか。受賞は当然である。