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今日の筆洗

2021年10月20日 | Weblog
 「一人の子どもを育てるには一つの村がいる」。子育てに関するアフリカのことわざだそうだ▼どんな意味かお分かりか。この人の幼少期がそれを地でいくような毎日だったそうだ。十八日、八十四歳で亡くなったコリン・パウエル元米国務長官▼育ったのはニューヨークのサウス・ブロンクス。当時は犯罪が多い地区で黒人の子どもが道を踏みはずしやすい環境だったそうだが、そうならないよう近くに住んでいた大勢の親類がいつも目を光らせていたそうだ。悪さをすれば親類が両親に「通報」する▼学校の成績は普通。野球は下手で、音楽もだめ。それでも腐ることなく、まっすぐな道を歩めたのは誰の子どもでも大切に育てる親類という「村」のおかげだと振り返っている。そしてその道は黒人初の大統領補佐官(国家安全保障担当)、黒人初の米軍統合参謀本部議長、黒人初の国務長官につながっていた。黒人初。そう書くのは簡単だが、その裏側にある苦労と努力を思う▼「自分の死亡記事にはその汚点について書かれるだろう」。あることをずっと悔やんでいた。イラク戦争の大義を訴える二〇〇三年の国連演説である。イラクが大量破壊兵器を隠していると非難したが、実際には見つからなかった▼痛恨の失敗だが、それをごまかさず、批判を真正面から受け止めていた。口うるさい「村」の教育のおかげなのだろう。