かつてのテレビ番組はスポンサーの意向が強く働いたのか、番組中に商品名や会社名が露骨に出てきた。大村崑さん演じる「頓馬天狗(とんまてんぐ)」の主人公は「姓は尾呂内(オロナイン)、名は南公(軟膏(なんこう))」だった。「ハリスの旋風(かぜ)」のハリスとは主人公が通う学校の名だが、スポンサーの菓子メーカーの名でもあった▼三菱電機と聞き、真っ赤な掃除機を連想したのは昭和のプロレスファンか。「ただいま、三菱電機の風神がリングをきれいにしております」。プロレス中継の中でアナウンサーがそんな紹介をした。子ども心に「風神」の吸引力はさぞや強いのだろうなと思った▼話は掃除機ではなく、三菱電機の鉄道車両用機器の検査不正である。不正を防げなかったと同社会長が一日、辞任した。七月にも当時の社長が辞任しており、両トップが相次いで辞めるとは異例の展開である▼報告書によると現場は規格に合わぬものをこしらえながら「品質に問題はない」と見て見ぬふりをしていたらしい。それを経営層も見抜けなかった▼当時の空気を従業員がこう表現している。「言ったもん負け」。改善を提案すれば言い出した者が取りまとめ役となるので仕事が増える。だから何も言わない▼知恵と丁寧な仕事で信頼を勝ち得た、かつての日本のものづくりを思えばため息が出る。再発防止には社内を清める巨大な掃除機が必要である。