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今日の筆洗

2022年04月07日 | Weblog

十九世紀末のパリには、東ヨーロッパから踊り子の一座がよくやって来て、ムーラン・ルージュやフォリー・ベルジェールなど有名なキャバレーやホールでダンスを披露していたそうだ▼バレエの踊り子をよく描いた印象派のフランス人画家ドガも見慣れない異国のダンスに魅了され、絵筆を執ったのだろう。一八九九年ごろの作という「ロシアの踊り子たち」▼題名をめぐる誤解を修正したい。そう訴える人びとの切実な願いに応えたかったのだろう。ロンドンのナショナル・ギャラリーは収蔵する「ロシアの踊り子たち」の題名を「ウクライナの踊り子たち」に変更すると発表した。有名画家の歴史ある作品の題名を変えるとは大きな決断である▼制作当時、ウクライナの一部地域はロシア帝国の支配下にあり、混同しやすかったか。だが、変更の根拠は絵の中にある。描かれた踊り子の民族衣装やウクライナを象徴する青と黄色のリボンを見れば、ロシアというより「ウクライナの」の方がやはり筋が通っている▼何よりもロシアがウクライナで野蛮な侵攻を続ける今、その踊り子が「ロシアの」と呼ばれることがウクライナの人々には耐えられなかったに違いない▼もう一度、絵を見る。草原だろうか。少女が足を上げ、踊る。爆撃、虐殺、がれきの街−。その「題名」も変え、ダンスし、ほほ笑む穏やかな街を取り戻したい。