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今日の筆洗

2022年04月09日 | Weblog

大学生らへの奨学金事業を担う日本学生支援機構の前身、大日本育英会は戦時中の一九四三年につくられた。当時、大蔵官僚として制度設計に関わったのが大平正芳氏。後の首相である。自伝「私の履歴書」によると、制度作りでは返済不要の給付とするか、貸与とするかで難航した▼大平氏は国がやる以上は給付が筋と考え、対象人数を絞れば可能と試算。給付を柱とする案を作ったが、政府内で抵抗され、貸与制度に改めた。対象学生を増やすことが優先された結果という▼大平氏も属した自民党の派閥・宏池会で育った岸田文雄首相。先日の会議で、学生が就職後に一定の年収に達した段階で返済する「出世払い方式」の奨学金創設を検討するよう指示した▼奨学金は今も貸与が多い。安定した収入の職に就けず、返済に苦しむ人も。昔は大学生は少数でエリート色も強かった。返済の苦労は、あまり想定されていなかったかもしれない▼当初、論理と数字で給付制度を唱えた大平氏を翻意させたのは大蔵省の上司。貧しい家に生まれ、養子に出て学を修めた人が切々と訴えたという。「姓を変えるのはつらい。同じような境遇で進学を断念せざるを得ない人も多かろう。理は理としても、できるだけ多くの青年に恩恵を」▼人を動かすのは、血の通った言葉。新たな奨学金にこだわるのなら、いずれ首相からも聞きたいものだ。