風天道人の詩歌、歴史を酒の肴に

短歌や俳句の鑑賞を楽しみ、歴史上のエピソード等を楽しみます。
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蟻と蟻 橘曙覧(比歌句 33左)

2018年05月09日 | 和歌

蟻と蟻うなづきあひて何か事ありげに奔(はし)る西へ東へ 橘曙覧(たちばなの あけみ)

 

あんまりいそいで  こっつんこ

ありさんと ありさんと  こっつんこ

あっちいって ちょん ちょん

こっちきて  ちょん

 

あいたたごめんよ  そのひょうし

わすれた わすれた  おつかいを

あっちいって ちょん ちょん

こっちきて  ちょん

関根栄一作詞・團伊玖磨作曲の「おつかいありさん」だ。

幼稚園児から小学生低学年では、いつも聞いていた歌だ。

 

橘曙覧の歌も子供心には「おつかいありさん」の魁というか本歌というかそういう響きがある。

ところが、大人の心で解釈すれば、橘曙覧が生きていた幕末ということを意識すると、国事に奔走する勤王の志士達の比喩ではないかと思えてしまう。

<事ありげに奔(はし)る西へ東へ>だからだ。

だが、曙覧自身は、市井の人として生きる覚悟で生を全うしている。

<1858年、安政の大獄で謹慎中の松平春嶽の命を受け、万葉集の秀歌を選んだ。曙覧の学を慕った春嶽は、1865年、家老の中根雪江を案内に「藁屋」を訪れ、出仕を求めたが、曙覧は辞退した。>(ウィキペディア 橘曙覧の項より)