風天道人の詩歌、歴史を酒の肴に

短歌や俳句の鑑賞を楽しみ、歴史上のエピソード等を楽しみます。
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消えむものか 与謝野晶子(比歌句 38 六)

2018年05月27日 | 和歌

消えむものか歌よむ人の夢とそはそは夢ならむさて消えむものか 与謝野晶子(よさのあきこ)

 

晶子は、“歌よむ人”と言う。なぜ、私と言わないのだろうか?私と“歌よむ人”との違いは何か?

生活人としての自分と、歌をよむ自分は、同じ自分でありながら別人格であると言っているのではないだろうか。

歌人晶子が見ている夢、“そはそは夢ならむ”ということは、夢なのか現実なのか定かではない“夢”は、消え去って欲しいと念じているが、どうしても消え去らないのだ。

みなぞこにけぶる黒髪ぬしや誰れ緋鯉のせなに梅の花ちる(比歌句 38 一)

歌人となった時に、ここで見ている物の怪のような存在が現れるのではないか。

のらす神あふぎ見するに瞼(まぶた)おもきわが世の闇の夢の小夜中(さよなか)(比歌句 38 三)

その友のもだえのはてに歌を見ぬわれを召す神きぬ薄黒き(比歌句 38 四)

と、神様との交際も詠んでいるので、歌人晶子の見る夢は“悪い夢”ばかりではないと思う。