あなたのこなたの そなたのこちの あらうつつなや 柴垣に押し寄せて うつつなの衆
『風雅と官能の室町歌謡』 植木朝子 角川選書
(今、読んでいる最中です。)
植木さんはこの歌を
<あちらこちらの、あなたの私の、ああもう何が何やら夢心地。柴垣に押し寄せて、無我夢中のあなた。>と解釈されている。
確かに、この歌を作者が歌になんらかの意味を込めて詠っているものとして捉えれば、この解釈は素晴らしいものだ。
だが、私はこの歌を読んだ時に、晶子の
< とおもへば垣をこえたる山ひつじとおもへばぞの花よわりなの >
が浮かんで来た。
この歌の作者は、人が分かってくれるかどうかは分からないが、目にした幻想をありのままに詠んだのではないか。
<遠いあそこからもこちらからもあなたのいらっしゃるそこからもわたくしのいるここからも これは現実なのかしら 柴垣に押し寄せているわ 幻のような若者たちが。>