井上靖「しろばんば」を読み終えたあとの
正直な感想はと言えば
「喪失感」でしたね。
あの時代。
子供が子供の世界だけで生きてゆくことのできた
あの時代への喪失感。
大人は大人であり、子供は子供そのもので
ありえた時代。
無茶なと思える子供の世界に存在した
掟、いたわり、いたずら、冒険、すべて
子供の世界に実現されていた時代への
羨望と喪失感・・・
そんな決して美しいだけではない「子供の世界」を
描き尽くした「しろばんば」ーー
今もどこかでそんなふうに
「子供だけに通じる世界」のただなかで
暮らしている子供がこの国に
存在しているでしょうか・・・・