Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

「分水工を探る」其の13

2011-01-15 20:04:16 | 分水工を探る

「分水工を探る」其の12より

沢号外

 中央自動車道伊北インター南にある沢上北交差点から木曽山脈沿いに走る広域農道を進むと間もなく西天竜幹線水路を渡る。もちろん意識していなければ知らずに通過することになるが、その100メートルほど南にヒューム管が突出している姿を目にする。不思議な施設なのであるが、一般的に円筒分水工を説明する場合の、「サイフォンの原理などを利用して円筒中心部に水を導き、その水が円筒外縁部を越流する」形式とすれば、これもまた円筒分水工として見ることができる。その構造は図の通りシンプルなもの。ヒューム管を縦に立てて設置し、付け根に流れ出た水は、ヒューム管の中を上昇し、ヒューム管に設けられた堰穴を越流して分水されるというもの。これまでに紹介してきた本来の円筒分水工は、円筒の外に分水用の制水円筒が設けられて二重三重と円筒を巻いていたが、これはその制水域がないものである。基本的構造は今までのものとなんら変わりはない。

 ここから灌漑しているのは2方向に分配されたところにある水田各1枚分だけなのである。この施設で灌漑している総水田面積は1600平方メートル程度。西天竜に設けられた分水工の中でも「号外」と明示されているものには数枚程度の水田を灌漑しているものが多い。もともと設けられた本来の分水工では灌漑できない水田のために設けられたもので、幹線水路に沿った管理道路尻にある水田がそれらに該当する。1枚とか2枚の専用分水工であるから、下流域の末端とは異なって、水に苦労することはないのだろうが、実はこの管理道路沿線にある水田に耕作放棄された土地が、今は目立つ。もちろんそうした専用分水工がなく、水を掛けるのに苦労しそうな水田もあって、「目立つ」景色を作り上げてしまっているのかもしれないが、耕作放棄とまではいかなくとも畑として利用している水田もある。今の時代では、水の便だけで耕作判断がされるわけだではないという姿をそこに見て取ることができる。

 この沢号外分水工から灌漑されている水田も、もう何年も水田として耕作された様子はない。この分水工から掛けている水田より低い水田は、北側の辰野町との境界にある沢4号の灌漑エリアになっており、本分水工のすぐ東側をその用水路が通過している。図の右側の分水はその水路を跨ぐように水田に掛けられているのだ。そもそも図には示さなかったが、ヒューム管の根元に、今は穴が開けられ、そこから沢4号の用水路に落ちるようになっている。ようはこの沢号外分水工に水を導水すると、サイフォンの原理は働かないというわけである。したがって、この分水工が本来の機能を見せる姿は、今は見られないということになる。

 たまたまこの施設はヒューム管という円筒形状を見せるが、実は円筒ではない角型水槽をヒューム管に代えて設置し、本施設と同じ機能で分水している箇所が西天竜には外にもいくつかある。もちろんそれらは「号外」とされているものの中に存在する。

 


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