月のひびき (徳正寺だより)

“いま”出遇えた一瞬をパチリ
それは仏さまとの日暮らし…

母なる海のはなし

2015年07月18日 16時59分52秒 | ふうわりふわり(坊守日記)


つい先日、帰省していたときのこと

海を見に行こうと車を走らせていると

遠い記憶がよみがえってきた



ひとけのない夕方の海


「お母さーん、待ってー」

どんどんどんどん…沖に向かって泳いでゆく母を

浮き輪に乗った私は、ばしゃばしゃばしゃばしゃ…ばた足をして追いかける

こちらを振り向くこともなく

沖に向かって泳いでゆく母…


他愛もない家族での海水浴のワンシーンを、今、何故こんなにも鮮明に思い出したのか…

その時に、寂しいとか、悲しいとか、不安だとか…幼い私がそんな感情を抱いたのかは、今の私にも思い出せないのだけれど

そのシーンを鮮明に思い出したときに

悲しみの涙が止めどなく流れた


「お母さーん、待ってー」


リフレインする声は波の音に吸い込まれてゆく…

きっと、今でも呼んでいるのだろう

あまりにも急に別れた母を…

きっと、今でももがいているのだろう

ばしゃばしゃとばた足をして…



海に着いた…

きれいなブルーの海が広がっている

誘われるように波打ち際まで行ってみた


母なる海は…ここだった