その時同じ町内に住む学生が一人、ラジオの曲を流しながら背後にきた、英次の声を傍若無人に断ち切って行く、黒ずむ家々、梢、星空に圧迫されそうな雰囲気を、その曲は壊して行く。木の葉の匂いが鼻についている。
「わかったからに。もういわなくていい。明日からは三人で仲よく暮らせたら私はそれで満足なんだよ、英次よ」
学生の曲が住宅地のまっただ中にどんどん沈み行く。
「はい」
「英次と語りあうのは何より楽しみだな。明日は」
と雄吉の手が伸び、帰ろうかと息子の肩に触れる。
(つづく)
「わかったからに。もういわなくていい。明日からは三人で仲よく暮らせたら私はそれで満足なんだよ、英次よ」
学生の曲が住宅地のまっただ中にどんどん沈み行く。
「はい」
「英次と語りあうのは何より楽しみだな。明日は」
と雄吉の手が伸び、帰ろうかと息子の肩に触れる。
(つづく)