50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

その時同じ町内に住む学生が・・・

2015-01-22 20:29:53 | 小説
その時同じ町内に住む学生が一人、ラジオの曲を流しながら背後にきた、英次の声を傍若無人に断ち切って行く、黒ずむ家々、梢、星空に圧迫されそうな雰囲気を、その曲は壊して行く。木の葉の匂いが鼻についている。
「わかったからに。もういわなくていい。明日からは三人で仲よく暮らせたら私はそれで満足なんだよ、英次よ」
学生の曲が住宅地のまっただ中にどんどん沈み行く。
「はい」
「英次と語りあうのは何より楽しみだな。明日は」
と雄吉の手が伸び、帰ろうかと息子の肩に触れる。

(つづく)