演劇好き。ヒイキの演目や女優となると男はもう、いても立ってもいられない。
偶然男が知人の子息にでくわしたのは劇場の、ロビーだった。冒頭は、『迷惑』だった。
「あ、おじさま、おじさまじゃないですか。奇遇う。彼女のきっと神通力か何かでしょう」
と若者、異常な明朗さを印象にしてきた。男はロビーに入るなり、さも親しくつかつかと捕まえられた。ふいをつかれて、つと釣られた魚のように腰かけたものだ。演目には曽根崎心中で、男はそれに加えてロビーの演出に釣られていただろう。ふいに、おじさまと彼にこられて、面くらった。「どうしたの?」
(つづく)
偶然男が知人の子息にでくわしたのは劇場の、ロビーだった。冒頭は、『迷惑』だった。
「あ、おじさま、おじさまじゃないですか。奇遇う。彼女のきっと神通力か何かでしょう」
と若者、異常な明朗さを印象にしてきた。男はロビーに入るなり、さも親しくつかつかと捕まえられた。ふいをつかれて、つと釣られた魚のように腰かけたものだ。演目には曽根崎心中で、男はそれに加えてロビーの演出に釣られていただろう。ふいに、おじさまと彼にこられて、面くらった。「どうしたの?」
(つづく)