50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

彼のいった彼女は、男には・・・

2015-01-28 20:06:31 | 小説
彼のいった彼女は、男には姪だった。彼は友人の子息で、さすがにおしゃれなとこが買えると男は思った。初夏の街角になれていた目がロビーになれるとそう思い、男の目には風景がすでに別世界の情緒な風貌であった。若者は濃艶な色のポスターを端目にしながら、今度はさも恥ずかしそうに気どっていて、
「彼女のことで・・・・・・つまりその、ぼくたちのことですが・・・・・・」

目にしみる青葉。マンションの谷間と呼んだ小公園がある。男はとぼとぼと、児童公園風な像の滑り台のある小公園に、たむろする女らに招かれる風に入っている。招かれる風に? 男は先日の若者の彼女姪に、その女らをつと目に重ねていたらしい。たれこめた雲の矩形の空だった。それから男の憂鬱はわずかに薄らぐようだったが、
「あらっクモが」
と軽く呼ぶように若い母の声がきた。

(つづく)