50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

「毒グモだったら、・・・

2015-01-30 21:14:51 | 小説
「毒グモだったら、たいへんでした」
いやあねと年上の女がいった。しなう腕や華奢な胸を男は頭の隅に呼びもどし、毒蜘蛛に違いない人間らに満ちみちた都市の、あらゆる風景がごちゃまぜに思いうかべられる。青葉の端にマンションのビルの頂きに、薄雲に太陽が西に傾いていっている。あの蜘蛛の行方は知れない。砂場で子らが助かっているではないか。
「意外とナイーブなんですね」
と頭の中で若者の呟き、男は苦笑をこらえる。
「あなただって、気をつけなくちゃダメよ」
「あら、どういうことかしらあ」
「どういうことだろう」・・・・・・若い母親に対してと男も象の滑り台の方に耳を傾けた。

(つづく)