大河 海の如し
森林 果てるを知らず
暗鬱なる雲 地を攻め
醒ます 五千年の眠り
孤舟の人 村夫子
過行くを見守り
何かに涙する
深山幽谷の人 村夫子
幾時代 流れど
人とは こういうもの
天空駆ける 塞翁が馬
幾山河 越えど
不老酒は無し
桃源郷 また 無し
ジャンタールの果てに逝きし人
かつての覇者 敗れる人
ミュールンブローの いくさびと
・・・・今 いずこ
頭上の冠 天睨み
小さきを踏み
痩せし体は折れるばかり
・・・・巨人は いずこ
血沸き血踊る人
大いなる単純
偉大なる鈍化は いずこ
裂けゆく者
崩れゆく者
ああ イリアス王 ダイオスはいずこや
同心円上だった二人
いつしか廻り合い
これだから そうだって
睦まじく 笑い合う
小さき頃 共に膿み
笑みを捨て
憎しみを育て
世間を睨んでた 幼顔
何かは止まった
もはや戻らない
加速するは 斜陽のみ
くれてったホワイトローズ
やけに白かった
いつか見た 造花のように
挫けゆく者よ
北ドイツの曇天を思え
森閑たる大地のなか
ニンフは踊るではないか
臍を噛むのはやめよ
遣る瀬無さを捨てよ
フォテンブローの森に捨てよ
ミューズの糧とせよ
ああ 民多し
ゲルマンの民 あまたに伏す
いるではないか ジークフリートが
夢想の住人たれ
狂気の隣人たれ
刹那に 跋扈せよ
ガラスの外は憂鬱
暗黒たる世界 口開け
跋扈に跋扈をかさね
呑もうとする 地獄の闇へ
国無き憑かれ人
虚栄と虚像の檻の中
セーヌは知ろうか憂悶を
ちらっと笑う シニカル巴里
ここは頽廃見本市
そら そら そこにもいる
いずれも廃墟 見本市
夜待つ屋根裏ひっそりと
籠城する夜光虫 そこにいる
そこにいるは リルケ