前を歩こうとした蟹は挫折した
歩けるという 妄想
歩かねばという 気負い
歩きたいという 希望
みんなそれらは挫折した
小川からの囁き
クプクプ声がする
あの日の蟹は言っている
・・・・とうてく とおるも とおるもう・・・・
・・・・とうてく とおるも とおるもう・・・・
・・・・ ・・・・
・・・・ ・・・・
誰にもわからない その声
小さな小さな ひみつの声
前を歩こうとした蟹は挫折した
歩けるという 妄想
歩かねばという 気負い
歩きたいという 希望
みんなそれらは挫折した
小川からの囁き
クプクプ声がする
あの日の蟹は言っている
・・・・とうてく とおるも とおるもう・・・・
・・・・とうてく とおるも とおるもう・・・・
・・・・ ・・・・
・・・・ ・・・・
誰にもわからない その声
小さな小さな ひみつの声
カプス君 こんにちは
私はリルケではなく 蓑虫です
東海の小島からです
・・・・まあ 聞いてください
あなたは 詩人志望なんですね
まあ 止しなさい
腹が減るばかりです
懐疑 孤独 悲哀
みな過ぎ去れば風です
それに憐憫
これに至っては醜態です
そんなこと どうでもいいんです
私なんか揺れっぱなしですよ
そんなもんです すべては
きのうは大風 危ないとこでした
私はリルケではなく 蓑虫です
それじゃ また
折れそうな月
友を恋う
雲に霞めど
あたえるは月明かり
消えゆく月
縋る袖を求める
それがオリオン座でも
それを求める
南を向く暖かさ
ここには無し
ここは北 そして冬
寄るべなき冬空
だが 願いよ せめて飛べ
その夜 睦まじく
ふたご座は月に近付く
うらぶれても なお
残るは怪しき文
甘い果実は そこにある
ハイネという 果実が
ああ 抒情とはこういうもの
だが 見抜かねば
そう 甘美の裏側を
詩人の涙は そこにある
追われし身の 哀れさよ
小さく握った そこ切符
霞んで見えた パリの文字
おお ここにもいる亡命人
古からの定めか
ここにいるは ダビデの子
かつて 緑は 淡かった
夕映え 黄昏 あかね雲
みんな かつては 淡かった
・・・・なのに 今 なぜ
薔薇は 斜陽を 好むもの
十色の艶 透けた艶 透けた艶
綺麗 綺麗の 刹那な宴
・・・・誰も言わねば 俺が言う
けれど 美女と毒
けれど 痘痕も宝
主観は意志の王となる
解毒の虚構
吐かれた異物
それは 血糊のエゴ
さびしいもんさ 声がする
隣の部屋は 勉強中
今日も音読 なおもする
たどたど たどたど ねむくなる
先生 明日も 怒るだろう
練習練習あるのみか
やんなるかな やんなるかな のすたるじあ
それはわかるが 気が止める
あの 茶色の校舎
その子も私も残されて
泣いてたような気が 今 する
たどたど たどたど
ああ せつなく聞こえてくる
たどたど たどたど たどたど と