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中国夜話 毛沢東異界漫遊記(七話) 老子に喝くらうの巻

2021-11-15 12:53:01 | 小説

 毛沢東は、いよいよ古代中国の性書について教わるときが来たか。
 「素女経」、これは紀元前二千五百年ころの、房中術である。
 皇帝の黄帝は、不老不死を願い、女仙二人に指南を受けた。
 その一人が素女であり、玄女と共に夜な夜な秘術を施したのである。
 素女は白を意味し、音楽の巧みな神女であり、四川は成都の出だらしい。
 玄女は黒を意味し、戦術にたけた神女であり、南方の出か。
 陰陽を司り、二人で一人とも言える。

 毛沢東は、養生の為に娘子をはべらせ、この「素女経」を実践させたのである。
 さかのぼれば、かの黄帝は、この術がゆえか酒池肉林をこなした。
 稀代の英雄、色を好むか。その奥義について、赤い皇帝も欲して止まずなり。
 さあ、老子様に、問うてんか……


老子 「毛よ、不老不死を願うは、これ道理なり」
   「人の世は陰陽に基づく、男は女から若返りの元をもらう」
   「女も然り。この陰と陽とで結び付くのが自然の摂理なり」
   「互いに欲する事により、一つになるは必然じゃ」
毛沢東「仰せの通り。私は下界にいた頃は、もっぱら女に頼っていました」
   「あの書を精読させ、技を身に付けさせる事ばかりでありました」
   「今思うと、まったくもって片手落ちでして、その、奥義が知りたくて」
老子 「でもな、毛よ、この天界にて知ってどうするのだ」
   「若返り術は、下界だからの事じゃ。もう、間に合わんぞ」
毛沢東「私は、かの黄帝の様に女仙に会いたくてなりません」
   「色の白い、あの素女に極楽に連れてってもらいたかった」
   「老子様、天界では誰にでも会えると聞き申した、会えませぬか?」
老子 「つまり、若返りぬきでの戯れの為か?」
毛沢東「はい、私めは、その、欲が深すぎてなりませぬ、下界が恋しくて……」
老子 「喝! 毛よ、はき違えておるぞ。お前は欲に溺れておる」
   「いいか、色欲とは下界ゆえの方便ぞ。天は子を作る為に悦を与えたんじゃ」
   「本当は子が主で、悦は従なのじゃ。この悦を与えたからこそ、人の世は続く」
   「大事な事には、悦が付くのだ。食うのも悦、寝るのも悦、わかるな」
   「悦なしでは、人の世は成り立たん。だが、悦は悦なのじゃよ」
   「やはり、お前には『素女経』を語るに値しないと見る」
毛沢東「あの、私の待女達では、技不足かと、で、もっと……」
老子 「喝!喝! お前は皇帝の様に後宮に浸かりたかったのだ」
   「今は天界におるではないか、未練を絶ち、己が修行をせよ」
   「したらば下界での悦なんぞ泡のようぞ、天界の悦こそ本物ぞ」
毛沢東「老子様、素女様には、やはり会えませぬか、話だけでもと……」
老子 「毛よ、では、お前の天界にての修行の出来で、わしが取り持ってもよい」
   「相当の修行ぞ、いいか、下界でのあらましを振り返れ」
   「数多の民以上の涙を流せ、自身を振り替えるのじゃ、その後でじゃ」
毛沢東「素女様に、よろしくとだけでも、お伝えくだされ」
老子 「まだ早い、まだまだじゃ、毛よ、まだまだじゃ……」
毛沢東「……」




 そもそも、老子様に「素女経」の奥義を聞くものではない。
 大思想家に礼を失するどころではない。
 皇帝に手ほどきをした、あの、素女様にこそ伺う事である。
 さて、毛沢東は女仙に会えるのだろうか……

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