<熊本地震>子供の心、深い傷…乱暴な言葉、赤ちゃん返りも
毎日新聞 5月21日(土)8時30分配信
「おい、クソジジイ」。熊本県益城(ましき)町の避難所の小学生の口から、次々ときつい言葉が飛び出す。園児は赤ちゃん返りし、いつまでたっても泣きやまない。震度7の激震を2度経験した子供たち。避難所で約5時間一緒に過ごし、深い心の傷を見つめた。【福岡賢正】
避難所には約20人の子供がいた。中3女子生徒に背負われた小4女児が、私(記者)に延々と攻撃的な言葉をぶつける。「おい、クソジジイ。お前、えらそうだな。えらそうに、このオッサン」。小3男児も体が触れただけなのに「おい、足蹴るなよな。コラ」と突っかかる。
児童虐待の取材をした際に接した被虐待児が里親などに示す「試し行動」とそっくりだ。心に深い傷を負って不安や恐怖を抱え込んだ子が、大人がどこまで許容するのかを試す無意識の行動だ。
「ごめんごめん、痛かったやろ」と言いつつ、あまり相手にせず、女子生徒に知人について書かれた新聞記事を見せていると、「ジイサン、ジイサン、オジサン、オジイサン。コラ、俺にも見せろ」と小3男児がわめく。
近くに座る高1女子生徒の膝の上に幼稚園年中の男児がいた。和やかだったが、年中男児は何かを要求し、女子生徒に断られると、地面に突っ伏して泣き出した。10分たっても泣きやまない。典型的な赤ちゃん返りだ。
年中男児が怒ってぶちまけた遊び道具を私が片付けようとすると、中1の男子生徒が「いいよ。自分で片付けさせる」と止める。
この男子生徒に「この1カ月、どうだった」と尋ねる。「まっ、いろいろ大変ですよね。でも俺は大人だから。友達と電話で『お前、生きとる?』みたいな。余裕余裕。楽勝楽勝」。懸命に背伸びしているように見える。
攻撃的な言動の2人の小学生について、それぞれの母親に話を聞くと、「みんなと一緒だと偉そうにしてるけど、夜になると怖がって。絶対1人になれないし、トイレも1人じゃ行けない」と口をそろえる。地震で変わってしまったようだ。
2人の母親のうち1人は、自宅が片付き、避難所を出られるのだが、ここで過ごす。子供が自宅を怖がるからだ。もう1人は最近家に帰ったが、昼間は避難所にいる。「夜はあの子、毛布かぶって縮こまって寝てます」
2人の夫は一方が単身赴任中、もう一方が4月16日の本震の翌日から休みなしだ。2人は「生活するのに稼いでもらわんといかんから」と笑った。
◇周りは余裕持って
トラウマを負った子のケアに詳しい井上登生(なりお)医師(発達行動小児科学)の話 心に恐怖を抱えると、自分を勇気づけるため攻撃的な言動をよく取るし、赤ちゃん返りや逆に頑張りすぎる子も。周りの大人が余裕を持って、大丈夫だよというメッセージを送り続ければ、時間はかかるが次第に症状は治まっていく。
日本児童青年精神医学会が作成した対応マニュアルをホームページ(http://child‐adolesc.jp/notice/2016‐04‐18/)で公開中なので、活用してほしい。
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♫ この男の子は、父親に抱きしめてほしいのだと、私は思います。
日本人はとくに日常的に、抱きしめることは、あまりありません。まして避難所などで人目があれば、よけいに抱きしめることを躊躇してしまうと思います。
男の子の「おい爺、おっさん」と言うのは、かまってほしいからです。嫌がらずに大人はこのような言い方をやめるようにいい、何かと言葉をかけてやるほうがいいです。
私にも実は似たような経験があります。何かと声を掛けてくれる大人は、実は子供にとってもうれしいものです。大人もそれどころではないでしょう。わかっています。
子供は不安にかられて孤独を味わっているのです。たとえ母親がいたとしてもです。
強い父親に守られたい。そういう気持ちが強くでているのではないでしょうか?
あるいは母親に守られたいというのも、赤ちゃん返りにでてくるのではないでしょうか?
母親はもちろん、大人が子供を抱きしめてやることが一番いいのです。
知らない大人の中で生活をしている子供たち、知らない中でも、一言二言の声掛けを皆がしていくことで、子供たちはきっと安心を得られるはずです。
ようするに、子供にとって、避難所の意味すらわからないのですから。
袖擦り合うも、多少の縁です。昔より疎遠になっている他人とのふれあいを、もう一度考えて見るといいかもしれないですね。
昔は近所に、子供たちの名前など知らない若いおじさんが住んでいて、そのおじさんが子供たちをかまっているので、男の子たちは、ぞろぞろと、後をついて行きました。そういう光景を想像してみてください。