女子プロボクサーの映画というと、
クリント・イーストウッド監督の
“ミリオンダラー・ベイビー”
を思い出す

“ミリオンダラー・ベイビー”は、老いたボクシングジムのオーナー役のクリント・イーストウッドから見た女子プロボクサーと家族を描いているが、
三宅唱監督の“ケイコ 目を澄ませて”は、聴覚障害の女子プロボクサーケイコ(岸野ゆきの)から見たジム会長(三浦友和)、家族との関係を中心に描いている
“ミリオンダラー・ベイビー”は、挫折した往年の名トレーナー・フランキー(イーストウッド)と元ボクサーのエディ(モーガン・フリーマン)に才能を見いだされたマギー(ヒラリー・スワン)がタイトルマッチまで駆け上がり、相手の反則により半身不随となる物語で、父と娘の葛藤、プアホワイト、宗教観、安楽死など重層的テーマで進行する、純文学のような作品
“ケイコ目を澄ませて”は、聴覚障害の女性ケイコがボクシングとジムのオーナーとの関係により成長する物語で、ケイコの揺れ動く感情の起伏と街の情景が映画ならではの手法で描かれる、叙景詩のような作品
16ミリフィルムで撮られたという粗い映像が写すケイコの表情には監督とカメラの愛が感じられる
ケイコがランニングする夜明け前の団地の情景、荒川や常磐線鉄橋の夜の情景が美しい
題名の“ケイコ 目を澄ませて”は、聴覚障害のケイコは視覚が優れていること、ひたむきな瞳の輝きを表すのだろう
監督・脚本 三宅唱(1984〜)
撮影 月永雄太(1976〜)
原作 小笠原恵子(1979〜)
「負けないで!」
キャスト
岸井ゆきの(小河ケイコ)
三浦友和(ジム会長)
三浦誠己(ジムトレーナー林)
松浦慎一郎(ジムトレーナー松本)
佐藤緋美(ケイコ弟)
中島ひろ子(ケイコ母)
仙道敦子(ジム会長妻)
岸井ゆきのと松浦慎一郎(ボクシング指導)のコンビネーションのミット打ち、ステップワークなどボクシングのトレーニングシーンが素晴らしい
これは、ミリオンダラー・ベイビー以上です
夜景の美しさは、北野武以来ですね
★★★★☆
お勧めします